2人の見事な連係が、後半の大攻勢に繋がった。

　最も印象的だったのは、3回戦の立正大淞南高戦での、あるシーンである。

　当時、立正大淞南には松田陸（セレッソ大阪）、松田力（アビスパ福岡）という双子の選手がおり、試合も先に2失点を喫するという苦しい展開だった。しかし、後半一気に反撃に転じた。

　谷口の展開力、車屋の効果的なオーバーラップが見事に噛み合い、徐々に立正大淞南を押し込んでいくと、あれよあれよと言う間に2点を返してPK戦の末に勝利を収めてしまった。

「開始早々に失点して、リズムが狂いました。でも2点を先行された後でも落ち着いて組み立てることができたので。紳太郎もバランスを考えながら仕掛けてくれて、全体的に大津らしさを出せたと思います」

　谷口はPKのラストキッカーとして冷静にシュートを成功させ、チームを勝利に導いた。当時から取材時の受け答えがしっかりしていて、非常に落ち着いて話をする選手だった。

　一方の車屋は「僕は3年生に必死に付いていくだけです。彰悟くんは本当に僕の動きをいつもしっかりと見てくれているので……だからこそ、もっとオーバーラップや守備の戻りなどの動きを磨かないと……迷惑をかけてしまう」と独特の間合いで話す、これもまた個性的な選手だった。

　2人の性格はまるで正反対に見えたが、とにかくこの2人の相性は抜群だったのだ。

高校卒業後、谷口の後を追うように車屋が筑波大へ。

　結局、2人を擁する大津は準決勝まで勝ち上がるが、優勝した前橋育英に0－1で敗れて、2人の夏はベスト4で幕を閉じた。

　そして2010年、プロ入りも噂されていたが谷口は筑波大学へ進学。3年になった車屋はポジションをボランチやCBに移し、「彰悟さんのようにチームを落ち着かせることができる選手になりたい」と、谷口の背中を追いかけるようにして高校のラストイヤーを過ごした。

　守備のユーティリティープレーヤーとして車屋はプロ入りの噂もあったが、谷口の後を追うように筑波大に進学。幼稚園での2人の邂逅をあえて1度目とするならば……小学校、高校、そして今度は筑波大というチームで、2人は4度目のチームメイトになったのだ。

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