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ヴェルディ、鹿島で磨いた気遣い。
初代表・三竿健斗はいないと困る男。
posted2017/12/09 07:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
「僕は本当に目立たなくていいんですよ。鹿島には僕以外にスター選手が沢山いますから」
8月26日、J1第24節セレッソ大阪戦でのミックスゾーン。W杯アジア最終予選のオーストラリア戦、サウジアラビア戦に向けた日本代表メンバー発表直後とあって、多くの報道陣が詰めかけていた。
報道陣のお目当ては日本代表の常連と言える昌子源、植田直通、そしてC大阪の山口蛍や好調さを買われて招集された杉本健勇だった。
それを横目にミックスゾーンを通過しようとする、三竿健斗を呼び止めた。
三竿は「俺?」という表情を見せて「俺なんかでいいでんすか? もっと話を聞かなきゃいけない人たちが沢山いますよ(笑)」と冗談めかしたが、足を止めてくれた。
的確な読みとボール奪取、縦パスに昌子も高評価。
この試合、彼の存在感は際立っていた。持ち味である的確な読みとボール奪取と、精度の高い縦パス。常に周りの状況を伺いながら、守備バランスが崩れている部分を埋めたり、カバーリングとDFラインからのパスコースを引き出す。攻守両面で効果的なポジショニングを取っていた。
この頭脳的なプレーに、昌子は絶大な信頼を寄せている。それは昌子に守備のディテールについて聞くと、いつも“健斗”という名前を口にすることから理解できる。
「健斗と話し合ってポジションを修正した。俺が動いたら健斗が落ちて来てくれたり、バランスをとってくれている。気の利くプレーは本当に助かっている」
三竿は昌子を常に視野に入れていて、バランスを保ってくれる。だから昌子は安心してチャレンジに行ける。実際、試合中に何度もポジショニングやチャレンジ&カバーを確認する姿が見られる。三竿もこのように話している。
「常に昌子くんの状況を良く見て、どこにいるべきか、どうボールにアプローチをして行くか考えています。大事なのはバランスを崩さないこと」
こうした潤滑油的な役割は、決して目立ちはしない。だが、彼がいたからこそ今の鹿島は高次元の守備バランスを構築できている。