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ボーヤン・ジンを探して――。
中国大陸を駆け巡った奇妙な取材記。
text by
西谷格Tadasu Nishitani
photograph byAsami Enomoto
posted2017/12/08 18:00
2022年に北京で開催予定の冬季五輪で金メダルを取ることが目標という金博洋。
シャイな性格なのに、豪快なジャンプをする男。
こうして取材当日を迎え、やっとのことで金博洋と対面できた。
その取材の成果は、Number941号の記事「金博洋 “4回転の申し子”誕生秘話」をお読みいただきたい。彼は一見、内気でシャイな印象だったが、練習中に見せてくれたジャンプには高さと力強さがあり、トップスケーターのすごみを感じさせた。このギャップに萌えるファンは、日本でも少なくないらしい。
練習を終えた金博洋のリュックを見ると、金博洋のマスコット付きキーホルダーがぶら下がっていた。とてもよくできていたのでてっきり市販されているものかと思ったが、後日、ファンが手作りしたものだと知った。ファンに愛されているのである。
小さな部屋は、イマドキの普通の雰囲気だったが……。
ダメ元のつもりで「部屋を見せてもらえないか」と頼んだら、快諾してくれた。
宿舎は6畳程度の簡便な作りだったが、金博洋は自身のお気に入りのヒップホップに関するポスターや帽子などで内装を整え、なかなか居心地良さそうにしている。
小さな簡易テーブルの上にはアクセサリーや小物類が並んでいたが、そこには奮発して買ったと思しき高級時計も置かれていた。が、それをカメラマンが撮影しようとすると、「それは撮らなくていいよ」と言って引き出しにしまった。
きっとそれなりの手当てや給金が与えられているのだろうし、若者がブランド物に興味を持つのも普通のことだろう。でも、20歳の自分がそういう物を持つのは、まだ分不相応という気持ちもあったのかもしれない。そんな仕草からも、彼の控えめな人柄を感じた。
こうして中国スケート協会の全面協力のもと、金博洋の記事は実現した。
お世話になった方々には心から感謝したい。
そして、本人が一番の目標として掲げている、2022年の北京冬季オリンピックで金メダルを取った暁には、もう一度取材させてもらえたら良いのだが……。