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ボーヤン・ジンを探して――。
中国大陸を駆け巡った奇妙な取材記。
text by
西谷格Tadasu Nishitani
photograph byAsami Enomoto
posted2017/12/08 18:00
2022年に北京で開催予定の冬季五輪で金メダルを取ることが目標という金博洋。
今度は片道1000キロを越え、北京へと向かう。
母親が言うには、「確かに金博洋は首都体育館にいるけれど、中国スケート協会の許可がないと、取材には答えられないんです。スケート協会に聞いてみてください。申雪さんという人が担当者です」とのことだった。
その後コーチにも電話してみたが、回答は同じだった。
これは、どうしても「中国スケート協会」を通さないとダメのようだ。
見通しは不確かだったが、片道1000キロあまりの国内線に乗り、首都を目指した。
次々とタライ回しにされて、その結果は?
地図で首都体育館の場所を確認すると、体育館の北側に「首都スケートリンク」という建物があった。
きっとここにいるのだろう。
いよいよ金博洋に会えると思ってドキドキしながら進んだが、建物の大部分はバドミントン場で、一般市民たちがラケットとシャトルで戯れている。その奥にこぢんまりとしたリンクがあり、世界レベルのスケート選手が、まさかこんなところで……と首を傾げた。
リンクには小学生しかいない。
小学生のコーチに聞くと、「金博洋は首都体育館にいる」との答え。体育館のなかにも、スケートリンクがあるのかもしれない。
首都体育館は、威圧感のある巨大な立方体の建物だった。入り口には守衛が立っていて、近寄りにくい。だが、ウロウロしてばかりいるのも怪しまれそうなので、思い切って堂々と守衛の立っている門へ向かって歩き出した。
すぐに守衛に進路を阻まれ、「どちらまで?」と聞かれた。
「スケート協会に行きたいんです」と答えると、「仕事ですか?」というので「はい」と言ったら、なかに入れてくれた。ホッとした。