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ボーヤン・ジンを探して――。
中国大陸を駆け巡った奇妙な取材記。
text by
西谷格Tadasu Nishitani
photograph byAsami Enomoto
posted2017/12/08 18:00
2022年に北京で開催予定の冬季五輪で金メダルを取ることが目標という金博洋。
お土産を沢山渡し……なんとか取材ができそうに。
体育館のなかを回ったが、スケート場が見当たらない。
受付の女性に聞くと、隣にある「訓練館」という建物のなかにあるという。行ってみると、確かに「中国スケート協会」と小さな看板が掲げられていた。受付で「申雪さんに会いたいのですが」と伝えると、部屋の番号を教えてくれた。部屋をノックしてなかに入ると、30代ぐらいの活発そうな女性が1人で事務作業をしている。責任者というので年配の男性をイメージしていたので、なんだか意表を突かれた。
「日本の雑誌記者のもので、金博洋に取材したいのですが」
とお願いし、Number本誌を何冊か手渡した。申雪さんは黙ってページをめくっていた。中国スケート協会は国家体育総局の下部組織で、日本でいうなら公益法人のような団体。メダルを狙える一流のアスリートとなれば、手の内を明かしたくないとも考えるだろう。なんとかこの女性に心を開いてもらわねばと思い、日本から持参した手土産(「ごまたまご」など)は3箱ともすべてここで差し上げた。
女性は、「内部で検討してからお返事します。取材を受けるとしたら週末になると思う」と答えた。多少の可能性は感じたものの、五分五分という印象だ。とりあえず返事を待つしかないと思い、いったんホテルへ引き返した。
事務所で1人働いていた女性は元金メダリストだった!!
夜、中国スケート協会の者だという女性から電話があった。
「金博洋の取材をしたいんですよね?」
「はい」
と答えて続きを待つと、「では土曜日の昼過ぎにスケートリンクに来なさい。本人とコーチ、母親を取材できるように手配しておくから」とのことだった。驚いた。本当に中国というのは予想外のことが多い国である。
その後、もう一度「百度百科」で「金博洋」の項目を見ていたら、尊敬する選手のなかに「申雪」の文字を発見。さらに調べて「申雪」の項目を見ると、なんとバンクーバー五輪のフィギュアスケートペアの金メダリストだった。
なるほど、若くして要職に就くのも納得だった。