濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
ユーチューバー草なぎ、ガンプロ乱入!?
極小団体トレンド入りの顛末と真の勝者。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2017/11/10 15:00
左から、草なぎ、今成、大家。異次元の組み合わせだが……初めてプロレスを観る人にも大いにアピールできたはず!
DDTが芸能人に対して引いた「一線」とは?
試合は草なぎが今成にフォール勝ちしている。フィニッシュはディーノの必殺技・男色ドライバーを草なぎが(相手の足を掴んで)アシストするというものだった。プロレス用語でいう「ハイジャック式」である。
つまり公式記録で「○」がつくのは草なぎでも、今成をKO状態にしたのはディーノ。草なぎはアシストしただけであり、ファンが「素人がレスラーに勝つなんて」と怒ったり嘆いたりしなくても済む展開だったのである。
ただ番組では事前の控室の模様も映し出されており、そこでは構成の一つとしてディーノが草なぎに「必殺技」を授けることになっていた。番組スタッフ側は、何か「草なぎスペシャル」のようなものを期待していたのかもしれない。
実は番組内の別企画で、罰ゲームとして稲垣に「所英男による吊り天井」がかけられる場面があった。MMAファイターにルチャ・リブレの技をかけさせる不自然さも無意味さも分かっていないスタッフが作っていたということだ。ガンプロのリングでも「勝者・草なぎ」にベルトが贈られている。何のタイトルだそれは。
そういう環境で、DDTは草なぎに勝たせることを許しても、レスラーにダメージを与える技は許さなかった。その一線の引き方、さじ加減がDDTの強みだ。
試合後のディーノは、ホームリングで引き立て役になった大家と今成を「一緒にプロレスをメジャーにしようと頑張ってる同志だから」と草なぎに紹介している。このディーノのファインプレーがなければ、猛スピードの進行の中、草なぎが大家たちにお礼を言える場面があったかどうか。
「プロレスの楽しさ、全国に見せたれ!」
DDTが引いた線を守りつつ、完全アウェーでもおかしくないプロレス会場でテンションを上げ切った草なぎたちも、高木の言葉を借りれば「本物のプロ」だった。草なぎはテンションが高すぎてふざけているようにしか見えないところもあったのだが。
そして何より会場のファン=ガンプロユニバースを忘れるわけにはいかない。「ユーチューバー草なぎ、ガンプロ乱入」の盛り上がりは、彼らの存在あってこそ。こういう企画は「芸能人が神聖なリングで何しやがる!」と怒るファンが出てくるリスクだってある。でもガンプロユニバースはそうならなかった。
草なぎたちが登場してきた時、一瞬でこう判断したのだと思う。
「うわ~なんだこれ! え、試合やんの!? ナメてんのかよ。でもいま日本で一番話題になってるネット番組に映ってるのか大家と今成が。大チャンスじゃん。よっしゃ盛り上げるぞ。プロレスの楽しさ全国に見せたれ!」