スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
青学大、東海大はなぜ負けたのか。
駅伝は「ミス」の数が勝負を分ける。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKyodo News
posted2017/11/07 11:00
大学駅伝の世界を完全に制圧していた青学大が、出雲に続き2連敗。箱根での王座奪還は可能なのか。
「こうなったら、箱根はなんとしても勝たないと」
ところが、下田が並走していた神奈川大、東海大に突き放された。全日本では6区までの各区間に監督から選手への声掛けポイントがあるが、原監督は下田の姿を見て、「これはダメだ……」と白旗を掲げた。
それでも6区の駅伝初登場の竹石尚人が好走し、最後の望みをつないだが、7区の小野田勇次が追い上げきれず、消化不良のレースとなってしまった。
「流れに乗り切れませんでした。それだけです。1区の中村の出遅れが響きましたね。本当に疲れる駅伝でした。無理かと思うと、巻き返して、次の区間でまた現実を突きつけられる。私の気持ちまでデコボコですよ(苦笑)」
それでもまだ、私は箱根駅伝では青学大が本命だと思っている。しかし、そのためには下田の完全復活が欠かせない。
「今年のチームが始動してから、エースがそろったことがないんです。田村、下田、鈴木(塁人)、橋詰(大慧)といった連中がみんな調子がいいという状態になったことがない。全体のレベルは優勝したチームと遜色ないので、柱さえしっかりすれば……」
そう話した原監督も、トップエンドの選手たちがそろって安定した走りを披露することを欲している。
やはり、偉大な先輩たちの穴は大きいのだ。神野大地、久保田和真、一色恭志といった学生長距離界を代表する選手が卒業し、原監督は、
「現状、2区を安心して任せられる選手がいません。それでも……」と話してから少し間を置いて、こう続けた。
「こうなったら、箱根はなんとしても勝たないといけないです」
東海大がアンカーでつけられた1分35秒の差。
そして東海大も、エースの「誤算」が優勝を逃す原因となった。レース直後、両角速監督は淡々と敗因を分析した。
「アンカーのタイム差を比較すると、神奈川大の鈴木健吾君と、ウチの川端(千都)の差は1分35秒ありました。7区終了時点で、神奈川大に対して17秒の貯金がありましたが、それでは足りなかったということです。少なくとも、1分は貯金を作らないといけなかった。1分あれば、鈴木君も追い上げるのに足を使ったでしょうから、また違った展開になったと思うので」