プロ野球亭日乗BACK NUMBER
DeNAの逆襲は宮崎敏郎から始まった。
頼れる「三振しない男」の復活。
posted2017/11/02 12:20
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Hideki Sugiyama
この好投を見殺しにはできない。
3連敗。崖っぷちに立たされたDeNAを救ったルーキー左腕・濱口遥大投手のノーヒット投球が続く中、流れを一気に引き寄せたのが5回に飛び出した宮崎敏郎内野手の先制本塁打だった。
「バッテリーが本当に頑張っていたので、なんとか塁に出ようと思い、いい形で点数が入りました」
ソフトバンクの先発左腕・和田毅投手が1ボールから投げた2球目だった。左足のつま先を少し引いて地面につけて右足一本で立つ独特のフォームから、足をあげてタイミングをとる。そこに138キロのツーシームが真ん中からやや内角寄りに入ってきた。
「手ごたえも良かったし、うまく反応できましたね」
いつも通りの素早い回転でさばいた打球は、左翼ポール際を飛び越えてスタンド上段へと消えていった。先制本塁打。8回にも1死三塁からダメ押しの右前タイムリーと勝負強い“ハマのプーさん”が、ようやく本領を発揮した。
昨年のキャンプでつかんだ「右打ち」の方向性。
チームも宮崎自身も苦しんだシリーズだ。
第2戦の6回にソフトバンクの中継ぎエース・森唯斗投手の146キロの内角ツーシームをライナーで左翼席に運ぶ勝ち越し2ランを放った。しかし自分の中ではずっと、本来の打撃ができていないもどかしさに包まれていた。
違和感はヤフオクドームでのシリーズ初戦からあった。
宮崎の打撃にひとつの方向性が生まれたのは、プロ4年目、昨年の宜野湾キャンプがきっかけだったという。
「右方向に打った方が率は残せるんじゃないか」
今季限りで引退した代打のスペシャリスト・下園辰哉から受けたアドバイスからつかんだ感覚がある。
「もともと自分のバッティングをどう説明したらいいかわからない。感覚なんです。でも下園さんにそう言われて、少しボールを長く見て右方向に打つことを意識するようになったら率も上がってきたし、打球も上がるようになった。結果が出るようになったんです」