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サニブラウンが駆けた変革の1年間。
香川真司やガトリンにも励まされ。 

text by

及川彩子

及川彩子Ayako Oikawa

PROFILE

photograph byHiroyuki Nakamura

posted2017/10/31 08:00

サニブラウンが駆けた変革の1年間。香川真司やガトリンにも励まされ。<Number Web> photograph by Hiroyuki Nakamura

競技以外ではあどけない表情を浮かべるサニブラウン。「日本人9秒台」をめぐる狂想曲の主役の1人であることは確かだ。

香川真司、ガトリンからも励まされてきた。

 苦しい状況を支えたのは家族や友達、そしてスポーツ界の先輩たちだった。

 サッカーの香川真司は知り合いを通じてサニブラウンを食事に招待し、自身の怪我の経験を話した。北京世界陸上で一緒に走ったジャスティン・ガトリンも「この怪我から学ぶことは多いはず。ムダにするな」と励ましのメッセージを送っている。

 夏の終わりに怪我は完治したが、試合には出場せず、基礎練習と進学準備に専念した。高校最後の年は静かに幕を閉じた。

 2017年1月4日。南アフリカのじりじりと照りつける太陽のもと、サニブラウンはオランダ代表のレイナ・レイダーコーチのチームで練習を行っていた。

「高校ではウォーミングアップの一つとして行っていた」というドリルを、レイダーは走りの基本と考え、重要視していた。慣れない練習でぎこちなさのあるサニブラウンを、レイダーは根気よく修正していく。

金メダリストとともに励んだ練習で気づいたこと。

「ゼロから作り直す」とレイダーが話すように、動きづくりはウェイトルームでも行われた。サニブラウンは猫背気味で、肩甲骨が少し内側に入っているため走る際に腕が外側に振れてしまう。そのため、肩甲骨の可動域を広げるストレッチがトレーナーの下でマンツーマンで行われた。フォームの矯正を行った後、本格的なウェイト練習を開始。バーの持ち方や上げ方なども丁寧な指導を受け、走りに必要な筋肉が効率的に、そしてバランス良くついた。

 週5回の走練習と3回のウェイト練習の結果、南アフリカ合宿の後半には力強いフォームになっていた。

 チームには五輪で三段跳連覇のクリスチャン・テイラー、リオ五輪の女子走幅跳とリレーで金メダルのティアナ・バートレッタなど、トップ選手たちが多数いた。参加した当初は高校生気分が抜けなかったサニブラウンも、彼らを見て少しずつ練習への姿勢が変わっていく。

【次ページ】 オランダでの練習では全てを直された。

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