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サニブラウンが駆けた変革の1年間。
香川真司やガトリンにも励まされ。
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byHiroyuki Nakamura
posted2017/10/31 08:00
競技以外ではあどけない表情を浮かべるサニブラウン。「日本人9秒台」をめぐる狂想曲の主役の1人であることは確かだ。
器用過ぎて必死さに欠けていたサニブラウンに……。
オランダの惨敗後、レイダーは練習パートナーの変更、練習内容の微調整を加えた。
しかし、「(日本選手権では)なんとかなりますよ。ロンドンはとりあえず経験が積めればいいかな」とのんきなサニブラウン。言われたことを器用にできるため、練習で必死さに欠けることに周囲は気づいていた。しびれを切らしたバートレッタに「経験のためにロンドンに行きたいなんて言ってる時間はないよ。もっと真剣に取り組みなさい」と活を入れられる。そこで「自分の目標は何か」と自問自答し、ひとつの答えを見つけた。「世界のトップと戦う」。
目の色を変えて練習に取り組み、自信を取り戻したサニブラウンを、チームメイトやコーチは安心して日本に送り出したのだった。「これまでの練習を信じろ。ハキームならできる」と。
もう迷わない。ロンドンには日本選手権と同様に、勝負をしに行く。経験を積みたいと言うつもりもない。3年後の東京五輪のために、確かな足跡を残すつもりだ。
(Number932号『東京へ。サニブラウン・アブデルハキーム「雌伏の1年に起きたこと」』より)