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なぜ明治大学は箱根を失ったのか。
「反撃のシナリオ」なき予選落ち。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2017/10/17 17:00
予選会前の時点で、明治が落ちると予想した人はほとんどいなかったはずだ。それだけに、ここからの立て直しは難しさを伴う。
「飛車角」と呼んだ2人がいれば……。
「今朝の時点まで、悪くても3番、もしくはトップ通過を狙っていく感じでした。想定として坂口は59分20秒から30秒、三輪も60分台で走る算段でした」
飛車角が抜けた穴は、どれほど大きかったのか。予選会で明治の9位、10位の選手のタイムは1時間2分18秒と1時間2分29秒である。
仮に坂口が59分30秒、三輪が60分59秒で走ったとすると、9位、10位の選手と入れ替わって「4分18秒」を稼げることになる。つまり、トータルは10時間8分47秒。これは城西大を上回り、8位で予選を通過できたタイムだ。
ふたりが揃って走れていれば、明治は無事に本戦に駒を進めていたに違いない。
「僕たち4年生がスタートラインに立てていないことが」
重く沈んだ報告会では、今回の登録メンバーに名を連ねることが出来なかった4年生の末次慶太主将が挨拶をしていた。
「後輩たちは持てる力を最大限出してくれましたが、三輪の途中棄権だったり、坂口の欠場だったり、そういったマイナスの面もありましたが、何より僕たち4年生が予選会のスタートラインに立てていないということが、最大の敗因だと思っています。予選会はあくまで通過点とチームの中に慢心もあって、このような結果にもなって、応援してくれたみなさんに本当に申し訳ないです」
時々、唇を噛み締め、必死で涙をこらえながら、言葉をつないでいた。
「僕たち4年生の箱根への道は断たれましたが、まだまだ後輩たちには箱根を走るチャンスはありますので、しっかり僕たちも来年度へつなげていきたいと思います」
たしかに4年生の不在は痛かった。20kmは長丁場。経験のある4年生が多ければ多いほど、安定感は増す。箱根の経験者である末次の欠場もまた、明治にとっては痛手だった。