炎の一筆入魂BACK NUMBER
この人がいなければ優勝は無かった。
河田雄祐が広島に残した大切なもの。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKyodo News
posted2017/10/09 07:00
新時代の赤ヘル野球における機動力、外野守備を作り上げた河田コーチ。鈴木の急成長にも、大きな役割を果たした。
盗塁、コリジョン・ルール……機動力で優勝に導いた。
常に先を読み、2カード、3カード先の対戦相手の映像をチェックすることもあった。
結果、チームは2年続けてリーグダントツの盗塁数を誇り、今季は田中広輔が盗塁王のタイトルを初めて獲得した。
'16年に導入されたコリジョン・ルールにもいち早く対応。春季キャンプから本塁へのスライディング練習を多く取り入れた。三塁コーチとしても豊富な経験と抜群の判断力で、紙一重の得点をもぎ取ってきた。
リーグ屈指の破壊力を持つ攻撃陣を活性化させたのは、紛れもなく河田が改革した「機動力」だった。
孤独になりがちな緒方監督にも直言し、しっかり支えた。
技術的なことばかりではない。
25年ぶりの優勝を果たした昨季、チーム内で「河田さんが来たことが大きい」という声をよく耳にした。
緒方孝市監督よりも1歳上で、現役時代は広島で共に戦ったこともある。コーチ就任まで、緒方監督の愛称「めぐ」と呼ぶ間柄。参謀となり「監督」と呼ぶようにはなったが、直接意見することは止めなかった。
新しいアイデアを提案し、雑談で笑い合う姿も見られた。孤立しがちな指揮官をフォローし、距離が生まれがちな若いコーチ陣とのパイプ役となり、首脳陣の潤滑油となった。
首脳陣の中だけではない。選手に対しても、分け隔てない。
同じ'15年シーズン終了時に入閣した東出輝裕打撃コーチは言う。
「若手には厳しいけど、主力にあまり言わない首脳陣もいる。でも河田さんは若手に言うことはベテランであろうが言う。筋が通っているから、選手は素直に聞き入れやすいと思う」