濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
サイバーエージェントが全株式取得!
藤田晋社長から見たDDTの魅力とは?
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2017/09/27 08:00
高木“大社長”とガッチリと握手をした藤田社長。AbemaTVの人気番組になれるか?
「DDTを変えるつもりはありません」
9.24後楽園大会では、オープニングで高木以下所属選手がずらりと登場、藤田社長もリングに上がり、挨拶を行なった。
高木曰く「DDTをDDTのままに、プロレス業界No.1を目指します!」。
藤田社長は会場のファンに向けて「DDTを変えるつもりはまったくありません」と宣言している。
サイバーエージェントから新たに取締役が入ったものの、DDTの経営を指揮するのは高木のままだ。
藤田社長によれば、AbemaTVでの中継や選手のタレントとしての起用(ドラマに出てもらうのも面白いと語っていた)、それに資金面などでのバックアップをしていきたいという。しかしクリエイティブ面は完全におまかせ、ということだろう。
ブシロードと新日本プロレスという成功例もあるものの、プロレスは独自の歴史と文化をもつジャンルだけに、部外者が「触ってくる」ことに忌避感を持つ者も少なくない。遡れば、人気絶頂だったビートたけしですらリング上で罵声を浴びたのだ。今回も「大企業がDDTの運営にタッチして“文化系プロレス”の角が取れたりしないのか。男色ディーノなんて、そのままやらせてもらえるのか」といった不安を抱いたファンもいるはずで、だからこその藤田社長による“変えない宣言”だったわけだ。
きっかけは路上プロレスだった。
現在はクリエイティブ面のプロデューサーでもあるディーノは、リング上で「これからも心の奥底にあるドロドロした下品なもの、地上波が隠そうとしているものを武器にしていく」とアピールしている。高木が“外”に向けて勢いよく叫び、ディーノは“内”にいるコアなファンの思いをすくい取る。これもDDTの変わらないスタイルだ。
ちなみにこの日、ディーノが勝った相手はスーパー・ササダンゴ・マシンwithマッスル坂井。坂井とササダンゴは同一人物だと思われていたが、実は坂井が全株式をササダンゴに売却し、子会社化。サイバーエーダンゴグループ入りしていたことが明かされた。
……といったようなネタは朝飯前なのがDDTだ。
藤田社長も、この坂井のパワポプレゼンを「ウチの社員に見習わせたい」とコメント。
実は、高木が藤田社長に会った際、スマホに入っていた路上プロレスの動画を見せたことがそもそもの話の始まりだったそうだ。「これはAbema(TV)向きだ」と感じた藤田社長が会場で初観戦したのは、この夏のビアガーデンプロレス。
よりによってディーノとササダンゴがプロデュースした、これ以上ないほどバカバカしい、最高に盛り上がった大会だった。
つまりDDTのDDTらしい部分がきっかけで、今回の株式譲渡が成立したのである。そう考えれば「DDTが“らしさ”を失ってしまうかも」という不安は少なからず払拭されるはずだ。