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「残念」ではなく「よく頑張った」と。
バドミントン山口茜、恩返しで優勝を。
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byYoshikazu Shiraki
posted2017/08/18 07:00
安定して強いイメージの山口だが、その強靭なメンタルの背景には、地元の多くの人達の温かい応援があった。
地元、そして自分を支えてくれた人々への恩返しを。
「出場しなければ、高校に進学するときに地元に残ると選択した意味がない。高校最後の1年は勝山市の人間として戦いたいんです」
それが自分を育ててくれた地元、そして自分を支えてくれた人々への恩返しだと考えたからだ。
結果は女子シングルスで3連覇を達成。学校対抗でも3位に入り、高校最後の大会を有終の美で飾った。
「たくさんの人に応援されていましたね」で涙が……。
あれから2年――。
山口は高校を卒業し昨春、再春館製薬所に入社した。社会人プレーヤーとして新たな道を歩み始めている。
昨夏には、数年前「まだ現実味がない」と淡々と語っていたリオ五輪にも出場し、ベスト8入りを果たした。
奥原希望との準々決勝後、テレビのインタビューに答える山口の姿が非常に印象的だった。普段はポーカーフェースの彼女が涙を流していたからだ。
後で聞けば、負けたこと自体は悔しいが、試合自体には「力を出し切った」とやりきった感があったのだという。それでも、普段はあまり質問されることのない「たくさんの人に応援されていましたね」という言葉に、一瞬にして感情が溢れだしてしまったと山口は振り返った。
「応援してもらっていたんだな、メダルを期待されていたんだと思ったら……自分に力が足りなかった、期待に応えられなかったなと思って。
リオ五輪であらためて感じたのは、昔からそうだったんですが、自分が勝つと周りの人が喜んでくれて、それが嬉しいということ。ボランティアでコーチをしていただいたり、いろいろな人の支えがあってこそ私はここまでくることができました。これから、それに応えるために何ができるかは分からないけれど、少しでも結果を残すことができたら。そして、その方々に“俺が育てたんだぞ”って自慢してもらえるようになれたら(笑)」