フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
羽生結弦の不滅の名プログラム、
『SEIMEI』で再び五輪へ挑む理由。
posted2017/08/18 08:00
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Asami Enomoto
8月8日、トロントのクリケットクラブで、今ではすっかり毎年恒例となった羽生結弦の公開練習と記者会見が行われた。
いよいよ迎えた平昌五輪シーズンとあって、今年は日本から来た報道関係者がテレビ局の映像メディアと新聞、雑誌などのプリントメディアを合わせて総勢80名ほども集まった。
このトレーニングリンクがあるクリケットクラブは由緒ある名門スポーツクラブで、会員はスケートだけでなく、テニス、クリケット、水泳など多くのスポーツを楽しむために集まってくる。それらの一般の会員の邪魔にならないよう、報道関係者は2階の大広間に集められ、リンクでの撮影も時間を分けて人数を制限するなど、羽生側のリンク関係者に対する気配りが感じられる公開練習だった。
「SEIMEI」再び。
今シーズンのSPを2シーズン前のショパン『バラード1番』にすることは、すでに発表されていたが、トロントではフリーをやはり2015-2016年シーズンに滑った、『SEIMEI』で五輪に挑むことが公表された。
その理由について、羽生はこのように語った。
「『SEIMEI』を2015-2016年シーズンにやって、いい演技ができた時からすでに、このプログラムをもう1回オリンピックシーズンに使いたいなと思っていたので、ほとんど迷うことなく決めました」
連覇を狙うトップ選手が、古いプログラムを勝負に持ってくるのは、手垢のついた印象にならないだろうか?
「その心配は全くしていません」と、コーチのブライアン・オーサーは太鼓判を押す。
「特に『SEIMEI』は多くの人々から愛された、成功したプログラム。ああ、この作品がまた見れる、とファンは喜ぶはずです」
周知のように、このプログラムは羽生を2度の世界歴代最高スコア更新へと導き、彼を一歩突き抜けた存在へと導いたきっかけともなった。
映画『陰陽師』を見てイメージを膨らませたというシェイリーン・ボーンによる振付は、和のテイストを取り込んだ作品に仕上がっており、羽生の涼やかな風貌ともピッタリはまった。
羽生結弦の代表プログラムを1つ選べと言われたら、この作品を上げるファンも多いのではないだろうか。