“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
FWとの空中戦で「うおりゃああ!」。
流通経済大柏・関川郁万は武闘派CB。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2017/08/15 08:00
センターバックとして大前提となるディフェンス力と闘争心。関川はそのベースをしっかりと鍛え上げている。
観客の度肝を抜く、ミサイルのようなヘディング。
そして20分、観客の度肝を抜くプレーを見せる。左CKからのクロスに対して、関川は頭ひとつ抜け出すほどのジャンプを見せる。そこから上半身を目一杯そらして、矢を放つように頭を振った。叩きつけられたボールはGKの前でバウンドし、ゴールネットに突き上げるように刺さった。
まるでミサイルのようなヘディングシュート。ボールの軌道を読む能力、長い滞空時間と全身のバネ、そして上半身の強さと、ミートの正確性。彼の持っている能力の高さが凝縮されたゴールだった。
このゴールで完全に“乗った”彼は、榎本とのマッチアップで優位に立った。そして39分にFW宮崎鴻を投入したことで、彼のアドレナリンは最高潮に達した。
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「宮崎選手はずっと戦いたかった相手。他の選手にはない、どっしりとしたフィジカルと空中戦の強さがある。燃える相手ですね」と語っていたように、日本人の父とオーストラリア人の母を持つ宮崎は、185cmの高さと分厚い胸板、強靭な下半身とバネを備える。それを生かしたヘッドと正確なポストプレーを持ち味とする屈強なストライカーなのだ。
「うおりゃああああ!」と叫び、ヘッドで跳ね返す。
実は4月22日のプリンスリーグ関東で、流通経済大柏は前橋育英に0-3で敗れていた。関川はこの試合はスタンド観戦だったが、宮崎にほとんど空中戦を制された印象が強く残っている。試合後には「ピッチに立って、宮崎選手とマッチアップしたかった。間違いなく、この年代ではフィジカルが飛び抜けているからこそ、一番自分の良さを引き出してくれる相手だと思う。真っ向勝負したかったです」と、無念の表情を浮かべていた。
戦えなかったからこそ、戦いたい欲望は輪をかけて大きくなる。
宮崎がピッチに入った瞬間、関川の気迫のスイッチが入ったのがすぐに分かった。その分かりやすさもまた、植田とそっくりだ。
実際に関川のプレー精度、そして闘争心はさらに上がっていった。カウンターの起点となる縦パスやロングフィードでチャンスを演出したかと思えば、投入直後から宮崎と激しい競り合いを見せる。そして70分、宮崎に入ろうとするロングボールに対応しようとした瞬間だった。
「うおりゃああああ!」
こう声を張り上げると、気迫をこめた、打点の高いヘッドで跳ね返した。