イチ流に触れてBACK NUMBER
好調のイチローが毎日続ける作業。
準備とは言い訳の材料を作らない事。
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byKyodo News
posted2017/08/01 11:30
ベンチスタートでも表情は明るい。イチローは準備を怠らず、常に自信を持って打席に立ち続ける。
スタメンではない時の、新たなルーティンもある。
変わらぬルーティン、変わらぬ身のこなしをキープするイチローだが、ここ数年、スタメン出場がない時に取り入れた新たなルーティンもある。両翼のポール間を黙々と走りこむランニングだ。
一日1打席の代打稼業。走攻守でフィールドを縦横無尽に走り回っていた試合の運動量を今は保つことは出来ない。苦肉の代替策として取り入れた練習だが、コンディションを保つことは難しい。
「出来ることはやっているんですけどね。それでも足りない。ゲームの体力とは違う。まぁ、でも、これ以上できないもんね。走ったりするぐらいしかないもん」
いつ与えられるかわからない先発出場に対し、その不遇を嘆く前に、自分が出来る最善の準備を尽くす。簡単でないことと毎日向き合い、プロとして、メジャーの世界で結果へと繋げる凄み。恐れ入ることである。
メジャー公式サイトが取り上げた「準備の美学」。
先日、イチローの準備についての動画が話題になった。タイトルは『The Art of Preparation』(準備の美学)。
自らの哲学を自らの言葉で伝えた内容に唸らされた。以下が彼の言葉になる。
「準備をするというのは、その日1日が終わった時に後悔をしない。言い訳の材料を作らない。1日終わった時に『あー、今日はあれをやらなかったな』とか『これをやっておけば良かった』、そういうことを1日が終わった時に思いたくないので、後悔しないためのものであると言えると思います。おそらくいい思い出、一番いい思い出ができるのは、僕が野球を辞めたあとじゃないかなと思っています。今は、昨日できなかったこと……が、一番悔しい思い出として残っています」
準備とは、“後悔をしない”、“言い訳の材料を作らない”こと。
イチ流の美学に心を打たれた。