球道雑記BACK NUMBER
都市対抗で36年ぶり優勝のNTT東。
セオリー無視の過激な盗塁野球の真実。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byKyodo News
posted2017/07/26 17:00
36年ぶり2度目の優勝となったNTT東日本チーム。ナインにより胴上げされる飯塚監督。
積極的なプレーによる失敗は、ミスではない。
その想いをもっとも噛み締め、日本通運との決勝戦では試合を決めるスリーランを放った下川も次のように続ける。
「僕が入社して1~2年目の頃は、試合で結果が出せなくて、飯塚監督にかなり迷惑をかけたと思います。それでも我慢して、期待して、使い続けてもらいました。
最近のオープン戦でも(都市対抗野球の準決勝と)同じような場面で三盗を失敗しましたけど、攻めていく姿勢はチーム内で常に言われていたことでしたし、積極的な失敗に関してはミスと捉えない監督さんなんで、本番でもやりやすかったというのはあります。だから、なんとしてでも恩返しをしたいとはずっと思っていました」
174cm、73kgと野球選手としたらけっして体格に恵まれた方ではない。それでも左打者で左中間のスタンドを越える打球を放つ。躊躇したスイングでは到底出来ないことだ。
オープン戦では意図的に積極的なプレーをさせた。
決勝戦はこの下川だけでなく、5番を打った主将の越前一樹、7番を打った加藤孝紀(明治安田生命からの補強選手)、9番を打った伊藤亮太の4人が本塁打を放った。監督曰くオープン戦でも類を見ない珍しい戦いぶりだったのだという。
だが、ここに挙げたビッグプレーの数々は偶然の産物ではけっしてない。
記者団の前では「走塁練習は特にしていないです。隙があったら行こうぜとは常に練習の時から言っていますけど……」と煙に巻いた飯塚監督だったが、それ用の練習は大会前に何度も繰り返してやって来た。
「しっかり練習してきたことを本番で出すために、オープン戦では何が悪くて失敗したかを感じてほしかったので、選手みんなに盗塁を含めわざと積極的に色んなことをやらせました。そのための練習、そのための練習試合ですからね。それで試合で成功したら『だろ、だろ』ってね(笑)。成功した選手の喜んだ顔も見られるのもあるし、そうやって少しずつ向上心を育てていく野球。それを目指しているんです」