Number ExBACK NUMBER
東京五輪でソフトボールの感動再び!
34歳・上野由岐子は必死で「休む」。
text by
田村航平(Number編集部)Kohei Tamura
photograph byNao Nakai
posted2017/06/30 14:20
昨季は史上初の日本リーグ通算200勝を達成。かつて121kmを計測して世界最速といわれた速球の力強さは健在だ。
あの頃の、鬼気迫るものこそ見えないが……。
「試合のない日は意識的に休んでいます。それこそ月火水木金で休んで、(リーグ戦の行われる)土日で頑張るくらいの感じ(笑)。もう34歳なので。自分で自分の体をしっかりコントロールするのも仕事だと思ってますから」
穏やかに語るその表情に、9年前、北京五輪のマウンドで見せた鬼気迫るものはない。
あの時、26歳の上野は日本代表のエースとして準決勝以降の2日間で413球を投げた。アメリカとの準決勝、オーストラリアとの3位決定戦、そして再びアメリカとの決勝。そのすべてに完投し、日本に初の金メダルをもたらす。
しかし、それは五輪競技から外れることが決まっていたソフトボールにおいて、あの時点では最後の金メダルでもあった。
目標を失っていた期間に、上野は重なりゆく年齢と相談しながら省エネ術を身に付ける。まるで、いつの日か訪れる大事な試合に備えて力を蓄えているかのように――。
2020年の五輪で追加種目として決定したソフトボール。
2020年東京五輪でソフトボールが追加種目に決まったのは、昨年8月のこと。翌月には上野が1年ぶりの代表復帰を果たし、止まっていた時計の針が動き出した。代表チームのメンバーも、3年後を見据えた若手主体の構成になりつつある。
そんな年下の選手たちに対して、上野は手厳しい。
「正直、まだ日の丸を付けるレベルの選手たちじゃない。逆に、本人たちにそういう自覚を持ってほしい」
確かに、代表合宿を見ていても上野と若手のレベルの差は歴然だ。シートノックでは内野手が捕ってから投げるまでの動作に無駄が多く、何度かコーチ陣の叱責が飛んで練習が止まった。
そんなときには、上野が皆の前に呼び出されて手本を見せることになる。