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日本人がラクロス豪州代表でW杯へ。
山田幸代、“出る杭”で世界と戦う!
posted2017/06/30 08:00
text by
別府響(Number編集部)Hibiki Beppu
photograph by
Sachiyo Yamada
「正直、代表に選ばれた時は、めっちゃ嬉しかったんですけど、なんかポカンとしたというか。これが率直な気持ちで。目標をクリアできてしまったという戸惑いなのか、いやいやまだ通過点だという落ち着きなのか、それは正直わからなかったんですけど」
山田幸代、34歳。
職業は、プロのラクロス選手だ。
今年7月に英国・ロンドンで開催される女子W杯に“豪州”代表として出場する。
ラクロスの場合、直近5年間のうち、2年以上当該の国や地域でプレーしていれば出身地以外でも代表になることができる。とはいえ、過去に2度のW杯優勝を誇る世界でも指折りの強豪国の代表に日本人が加わるというのは、もちろん初のことだ。
日本代表として活躍してきたが……大きな壁が。
山田が日本代表ではなく、豪州代表を目指したきっかけは、12年前に遡る。
「2005年のW杯に日本代表として出場したんですが、そこで自分の一番弱い部分を見たというか。そこまでは結構、とんとん拍子で来ていたんですけど……」
京産大でラクロスを始めると、1年後にははやくも年代別日本代表入り。順風満帆だったはずの競技生活は、W杯という大舞台で世界の高い壁にぶつかった。
「今まで入っていたシュートが全然、入らない。思うようにいかなくて、なんか気持ちが“飛んじゃった”んです。表面上はチームを勝たせようとしていたけど、自分のことしか考えられなくなっていた。そんな時に、豪州代表と練習試合をしたんです。そこで、ボコボコに負けちゃって」
その時は練習試合だったが、結局、豪州はW杯本番でも決勝で前評判での不利を覆し、米国相手にダブルスコアで圧勝。ここ一番での集中力と、精神力の強靭さは、当時の山田にはまぶしく映った。
「とにかくその勝負強さを学びたいと思って。そう思ってからは迷わなかったです。生活が変わる不安とかはなかったですね。むしろ自分が成長したい、と思っていましたから。行ってみないとわからないことがたくさんありますからね」