スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
ロナウドの「出て行く詐欺」疑惑。
スペイン人の過半数は彼を信じず。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byGetty Images
posted2017/06/25 09:00
ロナウドを買うのに400億円。これが高いのか安いかはクラブによって判断基準が異なることだろう。
スペインでは過半数の人が彼の本気度を信じていない。
今季はチーム、個人共に素晴らしい結果を出し、監督やチームメートとの関係も良好で、クラブとは昨年11月に2021年まで契約を延長したばかりである。なお、その際彼は次のように喜びを語っている。
「ここは自分の心のクラブ、家のようなもの。5年間の延長を実現した今は唯一無二の瞬間だ。これが最後の契約にはならないよ。それははっきり言っておこう」
コンフェデ杯の初戦、第2戦でいずれもマンオブザマッチに選ばれ、メディアの前で発言する機会があったにもかかわらず、自身の去就について一切のコメントを避けたことも「出て行く詐欺」疑惑に拍車をかける。
既に世界中に知れ渡っている情報である。誤報であれば否定すればいいし、不退転の決意を固めているならそう言えばいいではないか。それに本人が沈黙を保っているにもかかわらず、どこから情報が次々と漏れてくるのかも不思議である。
こうした状況の下、スポーツ紙『ディアリオ・アス』がウェブ上で行ったアンケートでは、「クリスティアーノが本当に出て行くと思うか?」の質問に対し、イエスの回答は36%にとどまった。なお「クリスティアーノの怒りを理解できるか?」には81%がノーと答えている。
つまり、スペインでは過半数以上の人々が「出て行く詐欺」と考えていることになる。しかもそれが事実だった場合、引き止めてもらうことを期待しているクリスティアーノの思惑は完全に逆効果をもたらしている。
一個人より大事なのはクラブ。出て行きたい選手は出て行けばいい。そんなドライな意見がファンやメディアから多く聞かれている。
ペレス会長はロナウドを引き止めない。
もちろんクラブは彼の引き止めに全力を尽くすと公言しているが、それも怪しい。フロレンティーノ・ペレス会長は何年も前から早くクリスティアーノを追い出し、新たなエースを擁立したいと考えてきたからだ。
もしクリスティアーノの売却が実現すれば、同じく左サイドを主戦場とする新たなガラクティコ候補、キリアン・ムバッペを獲得しやすくなる。会長自ら「未来のバロンドール」と太鼓判を押すマルコ・アセンシオの出番も増えるだろう。
要するにクラブとしては、残るなら残るでいいし、それ相応の移籍金を残してくれるなら出て行ってもらっても構わないのである。