松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER
松山英樹との再会を喜ぶ地元高校生。
全米OPで「ヒデキ優勝できるよね?」
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph bySonoko Funakoshi
posted2017/06/15 11:40
練習ラウンド後に記念撮影する青木功、松山英樹、谷原秀人、宮里優作らを見守るボードボーイのトレイくん。夢のような時間は永遠にも感じたはず。
懸念のパットが「だいぶまともになってくれた」。
「ヒデキは優勝候補だよね? 優勝できるよね? いつも自信満々の顔をしている。メンタリティがとても強そう」
トレイくんは大好きな松山の優勝を望み、そうなると信じている様子だった。
現実に目をやれば、松山は2月のフェニックス・オープンで2連覇を達成した直後から、どうも成績が振るわず、ショットにもパットにも満足がいかず、試行錯誤の旅を続けてきた。だが、大会前の最後の試合となったメモリアル・トーナメントでは、ショットのほうは「今ぐらい曲がっていたら(全米オープンは)話にならない」と言いながらも、パットのほうは「まだ不安のほうが勝っているけど、だいぶまともになってくれた」。
そして、「いいショット、アプローチ、パッティングができれば、チャンスはある」と光明も差し始めていた。
その翌週の前半は、本拠地としているフロリダが激しい雨に見舞われ、練習がほとんどできなかったそうだが、週末からエリンヒルズに入り、土日に各18ホール、火曜、水曜もコースを回り、精力的に試合に備えた。
松山の関係者によれば、ショットは土日でかなり良くなったように見えたが、「本人はまだ満足していない様子。理想は果てしなく高いので」。
それでも、以前のように暗闇の中の試行錯誤から、光が見えつつの試行錯誤に変わりつつあるのだとすれば、それは着実な前進である。目指すべき理想と現実の、そのギャップが少しでも縮まること、いや、縮めること。それが努力であり、やりがいであり、そのための精進なのだから。
きつい戦いになると同時に、どうにかするはず。
エリンヒルズを36ホール回った時点で、松山はこんなふうにコースの印象を語った。
「思ったよりラフがすごい」
「ティショットがフェアウエイに行かないと、きつい戦いになる」
「バック9のほうが、すごい大変」
「11番はフェアウエイに行けばどうにかなるが、12番からはどうしようかなって感じ」
驚き混じりの否定的な言葉が次々に口を突いたが、そのわりに表情は明るい。「どうしようかな」と言いながらも、彼の視線に困惑は感じられず、むしろエネルギーが伝わってくる。
「どうにかなる」
「どうにかする」
「どうにかできる」
そんなふうに思っているのではないか。練習日の松山の姿には、だからこそ、トレイくんにも「優勝できるよね」と信じさせるものがあったのだろう。