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ゾーンに入ると、乾貴士は微笑む。
伝説の“セクシーフットボール”再び。 

text by

安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

PROFILE

photograph byAsami Enomoto

posted2017/06/12 14:30

ゾーンに入ると、乾貴士は微笑む。伝説の“セクシーフットボール”再び。<Number Web> photograph by Asami Enomoto

香川真司が欠場するイラク戦では代わりに10番を背負うことになった乾。「華麗かつ結果を出す」プレーができるか?

乾はずっと「舞」ができる選手であり続けられるか?

「今日(シリア戦)は本当に楽しくプレーできた。もちろん、楽しくやる中で結果を出したかったけど、こういう感覚をおぼえられたことが良かった。

 監督からはどんどん裏を狙えと言われていたけど、裏だけじゃキツいと思っていたので、落ち着かせるところは落ち着かせながらやらないといけないと。裏を狙いながらも、その上で自分なりの判断を早くして、出すところ、溜めるところを意識しました。一番良かったことは『楽しくやれた』ことですね」

 シリア戦後、彼はさわやかな笑顔を見せた。

「楽しむということは『自分のプレーを出す』ということ。出せていない時は楽しくないので。重要なのはそれを出すために、自分は何をすべきかなんです。自分から発想を持って、積極的に出していくことが大事ですね。そのことは、スペインに行ってから学びました」

 乾貴士の舞の真骨頂は、局面によって自らシナリオを書き換えながら、それを表現していくことにある。

 いつの時代も、エレガントな「舞」を踊るような選手は「チーム戦術」という制限の中で、真っ先に被害者となりやすい。多くの選手が監督やコーチからプレイスタイルの変化を求められ、自分を見失ったり、舞を踏めない「普通の選手」に成り下がっていくのだ。

「楽しいだけでなく、勝たないといけないので、イラク戦は両方達成したい」

 ロシアW杯アジア最終予選の正念場であるイラク戦で「勝利に直結する舞」を披露する――乾は様々なシナリオを頭に描きながら決戦の地へ飛び立った。

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