“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
J1即スタメン、原輝綺18歳の苦悩。
強すぎる使命感をU-20で忘れろ!
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/05/10 11:00
甲府戦で原はチームに勝ち点3をもたらす原動力となった。高卒新人らしい初々しい笑顔を新潟サポーターに見せられる日は来るか。
“自分でチームを勝利に導く”という使命感。
J1第10節の川崎vs.新潟の一戦、左サイドバックとして原はフル出場を果たしたが、チームは0-3の完敗を喫した。試合後のミックスゾーンで大勢の報道陣に囲まれた彼は、終始暗い表情を浮かべていた。そして、ある記者から「プロに入って、思い描いていた理想と、現実のギャップは実際にありますか?」という質問が飛び出すと、彼は言葉を詰まらせた後、こう口を開いた。
「そういうのは……今をしっかりと受け止めるしかない。もう思い描いていた云々とか言っている場合じゃない。もう一度イチからやり直さないといけない」
この言葉に大きな違和感を覚えたのと同時に、彼の心に重く伸し掛かっているものの正体がはっきりと分かった。彼は“ルーキーとして”という心持ちを全く持っていない。むしろ“チームを勝利に導かないといけない”という使命が、彼の心を支配している印象だった。
もう周りに頼っていられないし、自分がやらないと。
囲みが解けた後、筆者は率直に彼に聞いてみた。「正直、今、サッカーをやっていて楽しい?」と。
すると彼は少し沈黙した後、「はい、正直……苦しいなと思うことがあります」と答え、こう続けた。
「今のチームの成績を見ても、僕が若手、若手と言っていられる状態じゃないんです。周りから“ルーキーなのに”とか“10試合スタメン凄いね”とか言われるけど、もう周りに頼っていられない状態だし、自分がやらないといけないと(第2節の)神戸戦、(第3節の)清水戦あたりからずっと思っていた」
開幕から試合に出ているからこその自覚と言えば自覚だが、いつしかこの想いが彼の心に大きな負担を強いることになっていた。