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小塚崇彦も本田真凜も心を打たれた。
村上佳菜子、泣いて笑った引退決断。
posted2017/05/06 08:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
4月23日。世界国別対抗のエキシビションのリンクで滑り終えた村上佳菜子は、涙を時折こらえながら、それでも弾けるような笑顔で、競技生活を締めくくった。
引退は、昨年12月25日の全日本選手権フリーを滑り終えた直後に決めていたと言う。
あのとき、涙を流しながら山田満知子、樋口美穂子両コーチと抱き合った村上は、試合後に言った。
「これまでスケート人生を歩んできた、そのすべてを出せるようにと思っていました。出せたことが、うれしかったです」
渾身の演技は、もがきにもがき続けた時間から生まれた、理想とする滑りだった。
コストナーのように、わっと感動させる演技を。
小さい頃からダンス教室に通うなど踊ることが好きだった。その影響もあってか、まだシニアに移行する前から、動きを大きく見せる力があり、それが人目を引いた。
中学3年生で出場した2010年の世界ジュニア選手権で金メダルを獲得。シニアデビューシーズンとなった2010-2011年シーズンにはグランプリシリーズのスケートアメリカで優勝を飾り、グランプリファイナルにも進出し3位と表彰台に上がる。世界選手権代表にも選ばれ、その後も常に出場を続けた。
「表現を見てほしいです」
演じることにこだわりがあった村上には、憧れの選手がいた。カロリーナ・コストナーだ。村上も出場した2014年のソチ五輪では、銅メダルという結果以上の強い印象を残す演技を、ショートプログラム、フリーで披露している。
「ジャンプも素晴らしいですが、つなぎの部分や表現がほんとうに素晴らしい。私もコストナー選手のような、観ている人たちがわっと感動する演技をした上で、自分自身もやりきったと思える演技をしたいと思っていました」