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“安定王者”だけでは物足りない!?
井岡一翔が目指す、具志堅越えの先。
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byKyodo News
posted2017/04/24 11:40
ランキング2位を相手に難なく勝利を収めた井岡一翔。
五輪で2回金メダルを獲った中国選手とマカオで戦う?
井岡もそのことは百も承知だ。最近、ターゲットに掲げているのがWBO王者、鄒市明(ゾウ・シミン、中国・36歳)との統一戦である。鄒はアテネ五輪で銅、北京とロンドンで金メダルを獲得した中国のスター選手で、昨年11月に2度目の挑戦で世界タイトルを獲得した。
米大手プロモーション、トップランク社と契約する鄒は、同社の中国市場開拓の切り札であり、ファイトマネーも高額だ。おいそれと日本のリングに立つことはないだろう。井岡自身が「マカオに行ってもいい」と発言しているように、マカオなど中国開催の興行で白羽の矢が立つことを期待するしかない。
もちろん他にも魅力的な選択肢はある。
WBC王者のフアン・エルナンデス(メキシコ)は5月20日、有明コロシアムで比嘉大吾(白井・具志堅スポーツ)の挑戦を受ける。エルナンデスは井岡が'11年にWBC世界ミニマム級王座の初防衛戦で判定勝ちしている相手だが、具志堅氏の愛弟子、比嘉が勝って統一戦となれば、ファンの関心も高まるに違いない。
IBF王座は現在空位で、今月29日に2階級制覇王者のドニー・ニエテス(フィリピン)がエクタワン・クルンテープトンブリ(タイ)と王座決定戦を行う。ニエテスもキャリアの終盤に入ってはいるが、WBO世界ライト・フライ級王座を9度防衛した実績を持ち、格としては井岡に引けを取らない。申し分のない相手と言えるだろう。
3階級制覇の最速記録を狙う田中恒成という選択肢も?
もう1人、WBOライト・フライ級王者、田中恒成(畑中)も候補に挙げておきたい。
これは近い将来、田中が階級を上げることが前提であり、不確定要素は強いのだが、かなり興味深い一戦だ。
21歳の田中は井岡の記録を上回る日本最速のプロ5戦目で世界王者となり、井上尚弥(大橋)と並ぶ8戦目で2階級制覇を達成。3階級制覇の最速記録は井岡の18戦目だから、対戦が実現すれば、またしても田中が井岡の記録に挑むことになる。井岡の試合を中継するTBSが強い関心を示すのも当然であろう。
井岡一法会長は試合後「一翔次第でスーパー・フライ級に上げることもありうる」と話した。井岡にはフライ級が最適のようにも思えるが、いずれにしてもビッグマッチを求めて、何らかのアクションを起こす時期に来ているのは間違いない。
モットーとする「唯一無二の存在」になるための戦いはまだまだ続く。