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細貝萌、絆創膏に秘めていた決意。
柏加入はJ復帰ではなく「挑戦」。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2017/04/16 08:00
細貝は16日の神戸戦に出場すれば、J1通算100試合出場を達成する。ピッチに立った際には真骨頂のハードワークを見せるはずだ。
日本に戻るなら問題ないでしょ、と言われるけど。
ルフカイ監督がクラブを去り、細貝自身も左足太腿肉離れ、右足小指骨折などケガに見舞われて復帰以降は控えに回った。レギュラーの座を取り戻すべくもがいたものの、ウインターブレイクの間にクラブはアンカーを補強。細貝はベンチ入りすらままならなくなった。
「ウインターブレイクが終わって、チームに合流した時点でも移籍は考えてなかったんです。でもかなり厳しい立場にあることは理解できましたし、これからのサッカーキャリアを考えても、これはもう決断しなきゃいけない、と」
勝負を賭けたシーズンで消化不良に終わった悔しさは狂おしいほどに残った。だが、欧州の移籍市場が1月いっぱいでクローズとなり、迅速に次の行動に移さなければならなかった。獲得に手を挙げてくれたのが、複数のJリーグのクラブだった。
「自分に声を掛けてくれたことは本当にうれしかったし、Jリーグでのプレーを真剣に検討するようになりました。ただ、日本に戻るなら別に何の問題もないでしょって人は思うかもしれないけど、そんな簡単なものじゃないです。丸6年離れているし、ドイツと日本ではサッカーの種類も違う。Jリーグのレベルが高いことも分かっていますから」
不安もあったなかで、柏レイソルに惹かれていく自分がいた。
J復帰ではなく、他国リーグへと「挑戦」する感覚。
条件面で選んだのではない。
「僕のことを一番、必要としてくれているなって感じたんです。本当に熱心に誘ってくれましたから。悩んだ結果、レイソルで挑戦するイメージができました」
覚悟は決めた。レイソルの力になりたいと心から思えた。彼は言った。
「人から見ればJリーグ復帰なんでしょうけど、僕が受ける感覚はちょっと違う。ほかの国のリーグに行くのと同じく、『挑戦』なんです」
手のひらの絆創膏は、苦悩と決意の証でもあった。