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200m平泳ぎの世界記録を持つ日本人。
渡辺一平の、感情を整理する力。
posted2017/04/12 11:00
text by
伊藤華英Hanae Ito
photograph by
AFLO
今年に入ってすぐの、競泳の東京都選手権最終日1月29日。渡辺一平選手が200m平泳ぎで世界新記録をたたき出した。
「まさか6秒台がでるとは。自分でもこの記録にびっくりしている」
オリンピック初出場だったリオデジャネイロでは、6位に入賞した。この結果だけでも、十分すばらしい。
しかし振り返ると、彼にはドラマがあった。
予選でしっかり自分の泳ぎをし、準決勝へコマを順調に進めた。
選手というのは、予選が一番緊張する人が多い。1種目なら尚更、自分の調子はレースで泳いでみないとはっきり分からないからだ。オリンピックともなれば、1本1本が勝負だ。決勝に残ることが当たり前の日本競泳界だが、もしスタートをミスしたら、ターンを失敗したら、ストローク数がいつもより多かったら……。
予想外の展開もある。いきなり速く泳ぐ選手もいる。様々なことが起こることを想定しながら、ミスなしで泳がなければならない。コンマ何秒の世界では、少しのミスが致命的だ。
そんな中、大事な予選。2分9秒63の全体8位で予選を終え、準決勝にしっかりコマを進めた。少しずつ自信を高めて行く。
他のレースに一喜一憂するのは普通よくないが……。
オリンピックのレースは大体、予選、準決勝、決勝が入り混じっている。選手の立場から考えると他の選手のレースに一喜一憂せず、いかに自分のレースに集中し、自分のやるべきことをこなすかが、結果を出すうえで重要なポイントだ。
しかしこの時、渡辺選手は、坂井聖人選手のレースからポジティブに影響を受けた。
「聖人さんがいいレースをしてくれて、自分もいけるのではないかと思った」