ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
村田諒太、やっと実現した世界戦。
マッチメークが困難を極めた事情。
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byAFLO
posted2017/04/05 08:00
ロンドン五輪から約5年、村田の周囲が水面下でタフな戦いに身を投じたからこそ、今回の世界戦が実現した。
サンダース陣営と交渉を進めつつWBAも見据えていた。
サンダース陣営は4団体制覇を目指すゴロフキン陣営とも交渉をしているが、これも実現の見通しは立っていない。双方が対戦を望みながら交渉が成立しないのは、ファイトマネーを含む諸条件で折り合いがつかないからだ。
帝拳ジムの本田明彦会長は「サンダースはいろいろと難しい選手だと聞いている。たとえ契約が成立しても、本人が試合に来るかどうか保証できない」とサンダースをあきらめた理由を説明した。
WBO王者との難しい交渉を進めながら、年が明けたあたりから、WBAの“レギュラー”王座の存在がクローズアップされてくる。ゴロフキンが3月、WBAレギュラー王者のダニエル・ジェイコブス(米)と試合をすることが決まり、そうなるとこの試合に勝った選手がスーパー王者となり、レギュラー王座が空位となるからだ。
結果はゴロフキンが勝利をおさめ、1位のエンダムと2位の村田に王座決定戦の道が開かれた。こうして村田陣営はWBAに舵を切ったのである。
日本での開催にこぎつけるため、タフな交渉を重ねた。
ならばこれで決まりかと言えばそうではない。ボクシングのマッチメークが難しいのはここだ。エンダム側はフランス開催を希望し、村田側は日本開催を希望する。そうなるとあとはファイトマネーを含めて諸条件が問題になる。エンダムが「嫌だ」とこの試合を拒否すれば、試合は成立しない。そうなれば村田はまた別の相手と交渉しなければならず、時間ばかりが過ぎていく。
こうした事態を避けるため、村田のマッチメークを行う帝拳プロモーション、アメリカのトップランク社はタフな交渉を重ね、エンダムを日本に呼び寄せることに成功した。
両者のファイトマネーは明らかにされていないが、軽量級に比べるとかなり高額であることは間違いないだろう。村田が「周囲の人たちが大変」というのは、こうした事情があったからだ。
ようやく舞台は整った。あとは村田が結果を出すかどうかである。