ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
今もアジアでは頭ひとつ抜けている?
ハリルJが証明した代表の潜在能力。
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2017/03/28 07:00
この2月に日本サッカー協会と代表監督の契約を更新したハリルホジッチ監督。ロシアW杯まで1年毎に更新する予定だという。
新監督就任以来、最もポテンシャルが引き出された。
しかし実はヨーロッパとの時差が3時間しかないUAEは、ヨーロッパ組にとって日本に戻るより負担が少なく、ずっと調整がしやすかった。
ベテラン選手たちは自らの役割を自覚し、チームはこれまで以上の一体感を醸し出した。そしてハリルホジッチの指示は微に入り細にわたり、選手は何の迷いもなくプレーに入り込んでいった。
理想的な時間に先制点(前半14分)と追加点(後半7分)を決めたことで、すべてが日本にうまく嵌ったゲームとなった。相手にボールを持たせながら、日本が常にゲームをコントロールした。
日本のプレッシャーを受けたUAEは、オマルが行き場を失って自分たちのリズム・スピードで攻撃を組み立てられない。
逆に日本は、常に縦を狙いながらときに遅攻も混ぜた攻撃の密度は高く、Jリーグでよく見られるディフェンスラインでの無駄なボール回しは一度としてなかった。
香川真司の役割など幾つかの課題はあったものの、ハリルホジッチ就任以降では日本のポテンシャルが最も引き出されたゲームであり、彼が目指すスタイルが最も顕著に見えたという意味で、今後に向けてのひとつの基準になるゲームでもあった。
タイ代表は……サッカー国力がまだ足りない。
ただ、次のタイ戦は、UAE戦とはまったく異なる戦いとなる。
UAE対日本戦と同日におこなわれたタイ対サウジアラビア戦を見ても明らかなように、タイ代表はそろそろ限界に近づきつつある。
1試合ならすべてが可能でも、10試合の長丁場――サッカー国力をかけた戦いで、タイの国力はそろそろ底をつきかけている。ホームゲームでの終盤の2失点が、それを如実に示していた。