ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
今もアジアでは頭ひとつ抜けている?
ハリルJが証明した代表の潜在能力。
posted2017/03/28 07:00
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Takuya Sugiyama
今からもう10年以上前になるだろうか。バーレーンの首都マナマでバーレーン代表を取材したときのことだった。
無人のピッチを歩いていると、ベンチに座りパソコンを操作していた初老の男性に声をかけられた。
聞けばその男性は、バーレーン代表のスカウティングを担当しているという。
当時の私は、ドイツワールドカップ・アジア最終予選でバーレーン代表の取材を担当していた。話は私が合宿まで追いかけたバーレーン代表のことや、日本の2連勝(ともに1-0)に終わった日本対バーレーン戦のこと、さらにそれ以前の2004年アジアカップ準決勝、中澤佑二の劇的なヘディングシュートで日本が90分に同点に追いつき、延長の末に玉田圭司のゴールでバーレーンを下した試合のことに及び、なかなか尽きなかった。
そんな中で彼がこんなことを言い、私は少し驚いた。
「埼玉での試合の前、われわれは小笠原満男が日本のキープレイヤーであると判断し、小笠原の分析を徹底的に進めた。ところが試合で小笠原はベンチに座ったままで、ピッチに立ちすらしなかった」
長谷部の代わりに今野。ハリルの代わりにマタルを。
それでは今回、マハディ・アリUAE代表監督は、今野泰幸という選手の存在を事前にどのぐらい把握していたのだろうか。
怪我人や出場停止、コンディション不良などで、ベストメンバーを組めないのは日本もUAEも同じだった。そんな中、UAEは予選得点王で昨年9月1日の試合で2得点を決めたアハメド・ハリルの代役を33歳のイスマイル・マタルに託し、日本は長谷部誠の代役に34歳の今野を指名した。
ともに'03年のU-20ワールドカップ(UAE開催/旧称・ワールドユース選手権)に出場している年代の選手だ。日本、UAEともに準々決勝まで進んだ大会で、マタルは最優秀選手に選ばれている。
だが、今回の試合での両者の差は、明らかだった。