猛牛のささやきBACK NUMBER
オリックス守備力アップのキーマン。
駿太は打球方向を読み切って守る。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2017/03/24 11:30
12球団屈指の守備力に、打力が追いついてくるか。プロ7年目の駿太にとって勝負のシーズンになる。
人間関係を気にして、気持ちをだましてやっていた。
「今までは、好かれなきゃいけないとか、人とうまくやっていかなきゃいけないとか、人間関係を気にしながら、自分の気持ちをだましてやっていました。やりたいことがあるのに、人の言うことを聞かなきゃいけないという葛藤があった。でも結局、ダメになった時、誰も助けてくれない。最後にたどり着くのは自分自身。だから自分を貫いた方がいいんじゃないかなと思ったんです。それに気づくのが早い人が活躍していると思うし、自分もまだまだ遅くないと思っています」
今年は打席で構えたときの立ち姿に一本芯が通った。背筋が地面と垂直にまっすぐに伸びて静止する。体のブレが少なく、ムダなくバットが出ている。それはずっとやりたかったことの一つだと言う。
戦える体を作ってから、バッティングに移りたかった。
また、大きく変わった体が強い打球を生み出している。今年1月、駿太は「長打力もあって盗塁もできる。ああいう選手になりたい」と目標としていた横浜DeNAの梶谷隆幸に志願して共に自主トレを行った。そこでは度肝を抜かれる量のウエイトトレーニングで体を追い込んだ。
「今まではバッティングの技術的なことばかり考えていて、体の面が疎かになっていた。だから一度バッティングのことは置いておいて、戦える体を作ってから、バッティングに移りたかったんです」
体重は約6kg増え、特に太ももや肩周りは明らかに一回り大きくなった。それでいて体脂肪14%は維持し、スピードとパワーを兼ね備えた体作りを意識してきた。
守備力の高い駿太がセンターのレギュラーを獲ることは、本人の悲願であると同時に、チームが変わるために必要なことでもある。
これまでのオリックスは、補強もスタメンも打撃重視だった。昨年のチームの失策数はリーグで2番目に多い89個。それに加えて数字には表れないミスや精彩を欠くプレーで余分なセーフや進塁を許していた。
守備の男・駿太はそれをもどかしい思いで見ていた。そんな状況を変えたいと願いながら、グラウンドに立てるだけの結果を残せていない自分が何より歯がゆかった。