スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
日本メディアが語らない米の勝因。
投手のメンツよりWBC勝利を優先。
posted2017/03/22 17:10
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Naoya Sanuki
いい試合だった。
日本はアメリカの本気を引き出し、アメリカもまた、ユニークな投手陣を惜しみなくつぎ込んで、日本の追い上げを断った。
準決勝の第1試合、プエルトリコ対オランダ戦はダイナミックな試合展開が野球の醍醐味を伝えたが、「日米戦」には洗練された真剣勝負の面白さがあり、緊迫感が最後まで途切れなかった(だからこそ、ミスが命取りになる)。準決勝についていえば、日本は投手陣が持ち味を発揮し、実力をアピールできた。
ただ、日本のメディアは「優勝」を期待し、煽りすぎたきらいがある。諸事情を顧みれば2次ラウンドを突破し、準決勝に進出するのが日本のノルマだったと思う。
負けたら終わりのノックアウト・ステージに入ったならば、運も左右するし、メジャーリーガーが居並ぶ相手に対し、簡単に勝てるはずもない(それにしても、国際試合なのに主審がアメリカというのは、どうも納得がいかない)。
ただし、悔やまれるのは日本の2失点が守備の乱れからだったことだ。手堅い守備こそ、スモールベースボールの基軸だからだ。
特に先制点につながるエラーを犯してしまった菊池に関しては、2次ラウンドまで守備でチームを救ってきた。まさにMVP級の活躍である。
ドジャー・スタジアムに舞台を移し、日本の球場とは違う芝を意識しすぎたか……。それも含めて敵地での試合ということだろう。しかし、その後にソロホーマーを放って責任を果たした場面は、この試合のハイライトだった。
菅野が、一線級のメジャーの投手に見えた。
負けたとはいえ、準決勝を見て大いに満足したのも事実だ。特に先発の菅野、2番手の千賀の投球には惚れ惚れした。
不思議なもので、メジャーの球場、メジャーの打者相手に投げる菅野が、一線級のメジャーの投手に見えたのは私だけだろうか。
豊富な球種を持ち、しかもそれぞれの球種のコントロールがいい。雨がボールのグリップに幸いしたのかもしれない。中でもスライダーの軌道は、メジャーでもなかなかお目にかかれないほどの鋭さ。ナショナルリーグの2年連続二冠の強打者、4番アレナド(ロッキーズ)を、3打席連続三振に切ってとったのは見事のひと言に尽きる。