マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
得意の守備も直され、打撃は大改革。
西武・源田壮亮のショート獲り作戦。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2017/02/09 08:00
辻監督に直々の指導を受けながら、自らの武器である守備を磨きなおす源田壮亮。プロ野球界に、ショートのレギュラーの席は12個しかないのだ。
同期といえど、投手と打者は一軍に残るライバル。
2つ並んだバッティングケージの三塁側にルーキー・源田壮亮が入ると、その背中を見るようにして、一塁側のケージで呉念庭が足場を固める。
源田壮亮に投げるのは、ルーキー・田村伊知郎(立教大・ドラフト6位)だ。絶好調だった昨春の東京六大学リーグ戦ではすばらしくスピンの効いた快速球と、ホームベース上でカッとすべるスライダーを投げていた。
その田村伊知郎の全力投球に、源田壮亮が手を焼いている。横には飛ぶし、上にも上がるが、肝心の前に打球が飛ばない。
プロは「同期の桜」が仲間じゃない。投手・田村にしてみれば、向き合っている打者・源田をここでやっつけておかないと、自分の“次”がない。一軍に残るまでは、同期も敵なのだ。
呉念庭の鋭い視線が、源田の背中に突き刺さる。
呉念庭が向き合っているのは、左腕のバッティング投手。打者を気分よく打たせることを職業にしているプロフェッショナルである。
呉念庭が快音を続ける。
見るからにバネの強そうな体躯から、インパクトをガツンときめて、ライナー性の打球をセンター方向へ続けてみせる。
三塁側のダグアウトの前へ、呉念庭の“目”を見に行ってみた。
快音を発した次の瞬間、呉念庭の目が必ず源田壮亮の背中を射る。そしてまた、インパクトの快音を彼の背中に叩きつけるように続け、そのたび、呉念庭の鋭い視線が源田壮亮の背中に突き刺さる。
呉念庭の視線を、おそらく源田壮亮は知らない。彼だって、それどころじゃない。
なんでも来い! のフィールディングほどは自信を持っていないバットのほうで、今日はピンチに追い込まれている。この田村のボールをなんとかしなきゃ……背中のほうで響いている呉念庭の快音も、きっとその耳には届いてはいまい。まして、彼の射るような視線が何度もおのれの背中に食い込んでいたことなど、夢にも思っていないのだろう。