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「この道を行けばいい」という感覚。
松山、石川、ウッズそれぞれの視野。
posted2017/02/01 11:30
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph by
Sonoko Funakoshi
「Make Tiger Great Again !!!」
トーリーパインズの大観衆の中から一際大きな掛け声が聞こえてきた。
2015年8月のウインダム選手権以来、1年5カ月ぶりに米ツアーに復帰したものの、ファーマーズ・インシュアランス・オープンで予選落ちに終わったタイガー・ウッズ。
ショットが曲がり、距離感も狂い、ラフの中で苦しんでいたウッズを眺めながら、ギャラリーの1人が思わず叫んだそのフレーズは、そう、あのドナルド・トランプ大統領がキャンペーン期間中も今も叫び続けているスローガン、「Make America Great Again !!!」のパロディだった。
周囲からは苦笑が漏れた。だが、ウッズは終始必死の形相。開幕前の会見では「優勝を競い合うレベルに戻れると思うか?」という米メディアのストレートな質問に「それはわからない」と、弱気に答えた。
初日は「1日中、タフな戦いだった。ラフの中ばかりで苦しかった」と溜め息もついたが、「最後はバーディーを獲れて、思わずキャディとハイファイブした!」と最後は笑顔になった。
2日目はスコアを伸ばせず、結果は予選落ち。だが、ウッズの表情は開幕前とは別人のように輝きを取り戻し、輝いていた。
ウッズは自分の前進を感じ、「道が見えた」。
「バハマのときより肉体が格段に強くなっていると感じた。それは今までにない新しい感覚だ。いい一歩を踏み出せた」
開幕前は、自分の肉体が本当に戦いに耐え得るものかどうかさえわからず、自信が無かった。ティオフしたら自分の体は、スイングは、メンタルは、果たしてどうなっていくのか。アウトプットの予想がつかず、先が見えなかったからこそ、ウッズは「わからない」としか答えられなかった。
だが、36ホールをプレーした中で、自分自身の前進を感じ、「先が見えた」、「進みゆく道が見えた」というウッズは、予選落ちしたとはいえ、かつてのような強気の発言を取り戻しつつあった。