松山英樹、勝負を決める108mmBACK NUMBER

常にフツウでいることの普通じゃなさ。
松山英樹、日本人最多4勝の舞台裏。

posted2017/02/07 11:40

 
常にフツウでいることの普通じゃなさ。松山英樹、日本人最多4勝の舞台裏。<Number Web> photograph by Sonoko Funakoshi

ティオフする前、松山英樹はサングラスを拭く。ルーティンの積み重ねが、彼の「フツウのゴルフ」を支えているのだろうか。

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舩越園子

舩越園子Sonoko Funakoshi

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Sonoko Funakoshi

 フェニックスオープン史上6人目となる大会連覇と、日本人最多となる米ツアー4勝目の偉業をかけて挑んだ最終日。

 そんな特別な日だというのに、スタート直前の松山英樹は1番ティで一生懸命、サングラスを拭いていた。

 次に彼が行なったこと。それは足のストレッチだった。右足、そして左足をゆっくり優しく伸ばすその姿は、気負いも気後れも感じさせない、いつも通りの普通の松山だった。

 そう言えば、この週の松山は初日から妙に「フツウ」を強調していた。それは、偉業達成に寄せられるプレッシャーに押しつぶされないよう、あえて自分自身に言い聞かせているのか。それとも総勢60万人超の大観衆に翻弄されないよう、あらかじめ予防線を張っているのか。

 彼が言う「フツウ」とは何を意味するのだろう。

「フツウ」は彼が目指す優勝へ、どう連なっていくのだろう。

 いろんな意味で特別な大会、特別な状況だったからこそ、「フツウ」の正体が知りたくなった。

緊張はしない、「フツウにやっていた」。

 6バーディー、ノーボギーの安定したプレーぶりで65をマークし、首位と1打差の2位で発進した初日。ディフェンディングチャンピオンのいきなりの上位スタートに周囲は色めき立ったが、松山自身は淡々としていた。

 前週まではショットの感触が「良くなかった」と肩を落とす姿も見られたが、この日はパーオン率94%を記録。アイアンショットはピンに絡み続けた。

 だが松山自身は、きわめてフラットな様子で言った。

「ショットは良くなってきているけど、まだ1日しか良くなってない。あと3日間、最終日まで(こういう好打が)打てたら自信を持っていいのかな」

 緊張はした? プレッシャーは感じていた?

「いや、何もなく、フツウにやっていた」

【次ページ】 フラットだった感情を少し跳ね上げた瞬間。

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