野球のぼせもんBACK NUMBER
中日・吉見が「うちならエース」。
SB石川柊太を激変させた6日間。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKotaro Tajiri
posted2017/01/29 11:30
(左から)石川柊太、吉見一起、千賀滉大、岸本淳希。自主トレは球団の枠を超えて技術を磨き合える貴重な期間だ。
オリックスの中島、伊藤、松葉らとも熱い議論。
やるべきことが分かれば行動に移すのみ。鴻江トレーナーが吉見に指導する際は、すぐ隣で耳を傾けた。毎晩行われた動作解析では吉見にアドバイスを求めた。昼間に撮ったVTRを、吉見も真剣に見てくれた。また、千賀をはじめ他にコウノエキャンプに参加していたバファローズの中島宏之や伊藤光、松葉貴大も一緒にその映像に釘付けになって、議論を交わしてくれた。球団、ポジションの枠を超えて皆が熱くなっていた。
日をまたぐ前にホテルへ帰るつもりだったが、ほとんどが「また今日」と言って部屋を出る毎日だった。深夜1時までトレーニング場にいた日もある。
「すごい場所に連れてきてもらいました。こんな自主トレは初めてでした」
素人目で見ても、明らかに投げ方がスムーズになった。そして球筋が変わった。
「去年まで、僕、自分の投げ方を『コンパス投法』って呼んでたんです。球を離すとき、左足が突っ張るのは分かるけど、軸の右足も突っ張るんです。日本人でそんな投手は他に見たことがない。外国人ならばと思って、パソコンで動画を探しましたが、海の向こうにもいませんでした。とにかく体のラインが高い。そりゃあ、高めにしか行かないですよ。今回ここに来て、自分の映像を見たら、右膝が曲がっていました。それでいて軸もきれい。びっくりしました」
千賀も「球が吹き上がっとる!」と驚くばかり。
千賀もその変貌ぶりには驚くばかりだった。
「球が吹き上がっとる。こんなにすぐ変わりすぎて怖い(笑)」
吉見も思わず「うちに居たらエースですよ。千賀といい、なんでホークスにはこんな育成選手がいるんですか」と苦笑いするしかなかった。
はっきり言って石川の知名度はまだない。今後、一軍デビューを果たしたとしても、初めの頃は「田中正義の先輩」という紹介しかされないだろう。しかし、無印の剛腕が今年の秋には新人王レースで先頭を走っていても全く不思議ではない。