野球のぼせもんBACK NUMBER
ソフトバンク史上、最も堂々とした新人。
秀岳館で磨かれた九鬼隆平の人間力。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2017/01/16 07:00
ソフトバンクの新入団選手発表記者会見にて。工藤監督を囲んでの記念写真。(前列左から)田中正義投手、古谷優人投手、九鬼隆平捕手、三森大貴内野手。
実は野球好きが多い、熊本という土地。
熊本は野球好きが多い。
年配者ならば「野球の神様」川上哲治の出身地であることが誇りであり、その後は秋山幸二、伊東勤の活躍に胸躍らせた。近年では前田智徳や松中信彦。各年代に郷土の誇るスターがいる。
地元意識が強い土地柄だ。だから高校野球の人気もすごい。地元地上波テレビ、ラジオでは1回戦から実況生中継が行われている。
昨年、熊本高校球界の主役は秀岳館高校だった。
春のセンバツでベスト4入り。夏の甲子園でもベスト4の快進撃で、「強い熊本」を全国に発信した。
しかし、話題になったように秀岳館のメンバーは県外出身者ばかりで占められていた。賛否両論の声がとにかくすごかった。
<熊本の学校というだけで、熊本の代表ではない>地元ではそんな声を上げる者もいた。
まだ高校生の球児たちに、心無い野次が……。
筆者は甲子園の準々決勝を観戦に行ったが、スタンドもアンチだらけ。とてもココでは書き記せないようなヤジも聞いた。選手のほとんどは関西からの野球留学。甲子園に来れば「地元」と思いきや、あまりに冷たい仕打ちだった。
目の前のグラウンドにいるのはまだ高校生である。彼ら選手には罪はないはずなのに。
その秀岳館のキャプテンであり、4番で捕手を担った九鬼隆平が、ドラフト3位指名を受けてホークスにやってきた。
入団発表で初めて対面したのだが、分かりやすく言えば一目惚れした。
高校生離れした落ち着きに驚いた。ドラフト後に九鬼のインタビューを放送したラジオパーソナリティが「声と口調を聞いていると、コーチか学校の先生が話しているのかなと勘違いしちゃいました」と言ったのも納得。一世一代の入団発表の舞台でも何一つビビっていない。