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ソフトバンク史上、最も堂々とした新人。
秀岳館で磨かれた九鬼隆平の人間力。
 

text by

田尻耕太郎

田尻耕太郎Kotaro Tajiri

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photograph byKyodo News

posted2017/01/16 07:00

ソフトバンク史上、最も堂々とした新人。秀岳館で磨かれた九鬼隆平の人間力。<Number Web> photograph by Kyodo News

ソフトバンクの新入団選手発表記者会見にて。工藤監督を囲んでの記念写真。(前列左から)田中正義投手、古谷優人投手、九鬼隆平捕手、三森大貴内野手。

こんな堂々とした高校生ルーキー、見たことない!

 これまでも誰に聞いても「(入団発表では)名前を呼ばれて席につくまでの時間が一番緊張する」と振り返る。しかし、九鬼はその時間、「ホークスの応援歌(『いざゆけ若鷹軍団』)が会場に流れていたじゃないですか。だからあれを歌いながら待っていました」と涼しい顔で言ってのけた。

 今年でホークスの取材を続けて16年目になるが、過去を振り返っても、あれほど堂々とした高校生ルーキーは記憶にない。

 ホークスの福山龍太郎スカウトもその人間力に太鼓判を押す。

「高校生の中では力も上位。実績はもちろん、体の強さも魅力です。だけど、それ以上に彼のリーダーシップや捕手としての目配り気配りに惹かれました。周りのチームメイトへの声掛け、投手をリードするときの仕草やジェスチャーも、普通の高校生では気づかないところまでしっかりと出来ています。捕手らしい選手ですね」

父の影響で身体を作り、秀岳館で人間力を磨かれた。

 九鬼の野球脳は遺伝かもしれない。父の義典さんはかつて池田高校の選抜優勝メンバーであり、社会人の松下電器でもベストナインに輝いた名選手だった。現在もパナソニックのブルペン担当兼アナリストを務めている。

 ただ、九鬼は野球一辺倒の道を歩んだわけではない。小学生の頃はバレーボールやサッカーに打ち込んだ。

「父の勧めでした。野球は体が出来上がってからでいい。それまでは色々なスポーツで体を強くすることも大切だからと言われました」

 少し遠回りをして始めた野球。じつは中学時代はずっと控え捕手だった。それらも、今思えば視野の広い人間になるためには必要な道程だったかもしれない。また、体は確かに強くなり、高い運動能力が身についた。昨年5月にスポーツメーカーが全国数千人の高校球児を対象に行った身体測定テストで、太もも裏と背中の筋力で1位、30メートル走では4位を記録している。

 そして、秀岳館で人間力はさらに磨かれた。

「2年秋に新チームになりキャプテンに就任しましたが、ベンチ入りメンバーに熊本出身者がいないことはその時から言われていました。最後の甲子園よりもあの秋が精神的には一番つらかったですね。みんなで励まし合ったり、声を掛け合ったりしました。でも、僕一人じゃなく、僕らのチームにはポジションごとでリーダー制を敷いていたので、みんながそれぞれ自覚を持って、お互いが気遣いあっていた。チームを引っ張っていたのは僕一人じゃなかった。それが良かったのだと思います」

【次ページ】 「冷静かつ熱い男」の九鬼こそ“火の国魂”だ!

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