JリーグPRESSBACK NUMBER
なぜ太田宏介はFC東京に復帰したか。
「僕の左足を一番必要としてくれた」
posted2017/01/13 11:00
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph by
AFLO
たった1年での、日本帰還。オランダのフィテッセでプレーしていた日本代表DF太田宏介が、今冬古巣のFC東京に復帰することになった。
今や、長年欧州でプレーする日本人選手は多く存在する。20代前半で海を飛び越え、そのまま本場の舞台で戦い続ける。サッカー選手にとって、1つの成功パターンである。
太田は28歳とこの世界では決して若くはない年齢ながら、2015年冬にフィテッセからオファーを受けた。FC東京とも契約を残していたため、獲得には違約金も必要だった。しかし、彼は実力を評価され、4年契約という好条件で渡蘭したのだった。
2017年1月初旬。太田はオランダでの戦いに終わりを告げ、東京・小平のFC東京練習場にいた。チームはまだオフシーズン。1年ぶりに帰ってきた慣れ親しんだ環境で1人、汗を流していた。
「この後、家の内見にも行かないといけなくて。バタバタです(笑)」
サッカーファンにはお馴染みの、いつもの明るい太田だった。
当初は欧州に残る予定だった。しかし……。
選手なら誰もが憧れる、欧州挑戦。その刺激的な環境に、彼は自ら終止符を打った。そこには、太田自身にしかわかり得ない理由が存在した。
都心へ向かう道も、当然ながら走り慣れている。帰ってきた東京の街並みを見つめながら、車内で太田が本音を話していった。
「挫折感とかはまったくなくて。日本に帰ると聞いて、人は挑戦を諦めたとか、失敗に終わったとか思うかもしれない。正直、人がどう捉えようかはいいんですけど、1つ言えるのは僕は向こうではすごく充実していたということです。
ただ一番は、やっぱりFC東京が僕をすごく必要としてくれた。僕はこれまで、どうしても海外でプレーしないといけないという欲を持った選手ではなかった。今回移籍して、オランダのレベルやスタイルを感じられた。ずっと日本でしかやってこなかったから、外を知ることができたのはすごく良かったです。きっと、東京や他のオファーがなかったら、間違いなくそのまま向こうでプレーし続けていた。最初は帰る気は全然なかったですから」