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なぜ太田宏介はFC東京に復帰したか。
「僕の左足を一番必要としてくれた」 

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西川結城

西川結城Yuki Nishikawa

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posted2017/01/13 11:00

なぜ太田宏介はFC東京に復帰したか。「僕の左足を一番必要としてくれた」<Number Web> photograph by AFLO

太田宏介のクロスは低く、速く、そして正確だ。本気でJ1優勝を目指すチームにとって、大きな武器になることは間違いない。

国内復帰は代表定着にはマイナス?

 1つだけ、懸念材料が頭に浮かんだ。ハリルジャパンである。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ日本代表監督は、海外組の選手を重宝する傾向がある。『デュエル』というフレーズが周知されたように、球際での激しい戦いを重要視する指揮官にとって、屈強な体格の選手が揃う欧州の舞台で日本人選手がしのぎを削ることが望ましい。

 実際に太田もフィテッセ移籍の際に、ハリルホジッチ監督からこう告げられた。

「オランダで激しさを覚えてこい。常にプレーは見ているから」

「僕にとってのサッカーは代表が全てではない」

 今後の代表定着のことを考慮すると、欧州から日本への帰還は指揮官にとってネガティブに映りかねない。それは、太田も重々承知のことだった。

「この1年、何よりあたりの強い選手に慣れることができたのが大きかった。普段の練習から激しいし、オランダは極端に1対1の局面が多いサッカーだった。行った当初は『すげえ迫力だな』とか思っていたけど、それも慣れて対応できていったし、相手にぶっちぎられるようなこともなかった。Jリーグにはマッチアップした相手でガンガン仕掛ける選手が少なかったから、どこまで自分が守れるか未知数なところがあった。オランダでメチャクチャ速かったり、体が強かったりと何か一芸を持った選手と対峙できて慣れたことは財産です。

 もちろん、このままオランダでプレーしていたほうが、ハリルさんは好むと思う。僕も代表に入り続けて、試合に出続けるようになることがベストですし、それを望んでもいます。ただ、僕にとってのサッカーはそれが全てではない。代表のためにプレーしているかと言われれば、そうじゃないんです。代表のことをこれまでもインタビューなどで聞かれたけど、ポジティブな発言をしないといけない空気がどこかあるじゃないですか。僕も『代表のために』と言わないといけないと思っていた。でも、所属しているチームで、まずは自分らしいプレーをする。それは変わらず、常に自分の中で一番です。

 だから、こうやって日本に帰ってきたことは、代表のことだけを考えれば正直プラスではないかもしれない。ただそこに自分は怖れていないというか、それが一番重要な部分ではなかったです」

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