詳説日本野球研究BACK NUMBER
打者・大谷翔平は清原、松井級か。
清宮にも通じる長距離砲復権の流れ。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byKiichi Matsumoto
posted2016/12/26 11:00
侍ジャパンのオランダ戦でも驚愕の一撃を放った大谷。この長打力が高校球児を刺激しているのは間違いない。
明治神宮大会決勝、清宮が見せた“第二の天性”。
こういうプロ野球界の変化は確実にアマチュア球界に伝わっていく。大谷のホームランと快足を見た3日後、明治神宮大会高校の部決勝で見たホームランの競演も強く印象に残った。前評判の高い早稲田実対履正社高という横綱同士の一戦で、1回裏に清宮幸太郎(早稲田実・一塁手)がまず右中間にソロホームランを放つ。
清宮の打つ姿を写真に収めようと私はファインダー越しに見ていたのだが、キャッチャーが大きく外角に構えるのを見て、これは打たないと思いシャッターボタンから指を離してしまった。ピッチャーの投げた球は少し甘く中に入り、清宮はこれを見逃さず右中間に運んだ。
そして第2打席、やはり私はカメラのファインダーをのぞき、キャッチャーが外角に構えるのを見てシャッターボタンから指を離した。ボールは外角のストライクゾーンに伸びて行くストレートで、清宮はこれを長いリーチで捉えライト前に運ぶのである。
ボール球、外角球を多投される清宮に打ってもいいボールは限られている。ストライクゾーンを広めに取って、打てる球はすべて打っていこうという習慣のなせる技である。ちなみにこの日の5打席中、清宮がストライクを見逃したのは17球中2球しかない。好球必打は清宮にとって第二の天性と言ってもいい。
履正社の安田も余分な動きを封印してホームラン。
清宮と並び称される履正社高の3番、安田尚憲(三塁手)も見事だった。小さく始動してステップするという流れは余分な動きを封印することでピッチャーの投げる球に差し込まれたくないという意識の表れで、レベルの高さがひと目でわかる。
1対1で迎えた3回表、1死一、三塁で初球の内角高めストレートを、バットをかぶせるように打ってライトスタンドに放り込むのだが、清宮よりさらにキャッチャー寄りで捉えているのはミスショットを少なくしたいという気持ちの表れだろう。清宮同様にストライクの見逃しは13球中2球と少なく、ホームランは初球打ちだった。