日々是バスケBACK NUMBER
NBAの可能性を期待される日本人。
八村塁、米名門大学で雄大に育つ。
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byYoko Miyaji
posted2016/12/22 08:00
NBAへの登竜門であるNCAAで、まだ完全な主力というわけではない。それでもアメリカのバスケファンにも八村塁(右のボード)の存在は浸透しつつある。
今はまだ、勝負どころでは使ってもらえない。
開幕から約1カ月半が過ぎ、ゴンザガは11試合を戦った(現地12月20日現在)。そのうち、八村が出場したのは7試合で、出場時間は合計35分。今はまだ、勝負どころでは使ってもらえず、試合の決着がついて、レギュラーメンバーがベンチに下がった後にようやく出番が回ってくる。
一度だけ、12分の出場時間を与えられた試合があり、そのときは10得点・9リバウンドを記録している。短い時間でも、ブロックや速攻でのダンクなどで潜在能力の一端を見せ、ファンの心をつかんでもいる。
それでもまだローテーション入りできない最大の理由は、チームのシステムを完全に把握していないからだ。言葉の壁に加え、チーム練習にすべて参加できていないことが妨げとなっているのだ。
「彼は、まだコート上で何が起きているのかを学んでいるところだ。何が起きているのかわからないのに試合中(勝負が決していない時間帯)に投入するのは難しい。それは彼にとってもよくないし、私たちにとってもよくない。彼の自信にとってよくないし、チームにとってもよくない」とフュー・ヘッドコーチは言う。
最大の課題はやはり、コミュニケーション。
八村自身も、NCAAの中で自分の力が「通用する」と自信をもって断言する一方で、コーチとのコミュニケーションが最大の課題だとあげる。英語はだいぶ理解できるようになったが、試合中の切羽詰まった状況でコーチから指示されたことを即座に理解するのはまだ難しいという。
「ヘッドコーチは試合の中では僕にゆっくり教えられないじゃないですか。その中で僕が理解できないとヘッドコーチのストレスになるし、僕もストレスになる」(八村)
コーチ陣も、八村自身も、今は無理に試合に出てもお互いのためにならないという点で意見が一致している。今、大事なのは辛抱強さだと、コーチたちは言う。八村に対する日本からの期待が、早く結果を出さなくてはいけないというプレッシャーにならないようにと気を使っており、言葉の端々から八村の将来を大事に考えてくれているということがうかがえる。