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NBAの可能性を期待される日本人。
八村塁、米名門大学で雄大に育つ。 

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宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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photograph byYoko Miyaji

posted2016/12/22 08:00

NBAの可能性を期待される日本人。八村塁、米名門大学で雄大に育つ。<Number Web> photograph by Yoko Miyaji

NBAへの登竜門であるNCAAで、まだ完全な主力というわけではない。それでもアメリカのバスケファンにも八村塁(右のボード)の存在は浸透しつつある。

授業が大変で、練習の半分を欠席している現実。

 今シーズンを迎えるにあたって、八村には選手登録されるかどうかのハードルがあった。渡米前にNCAAの最初の基準はクリアし、渡米後に大学入学のための基準もクリアしていたが、選手登録されるかどうかは、また別だった。コーチたちは、まだ英語でのコミュニケーション能力が十分ではない八村をいきなり選手登録するのか、1年間レッドシャツ(練習生)として準備期間を与えて自信をつけさせるのか、ぎりぎりまで迷っていたのだ。

 フュー・ヘッドコーチは説明する。

「今の彼は授業がかなり大変で、そのために練習の半分に出られていない。そのことが、彼が(バスケットボール面で)遅れを取る原因となっていた」

 そんな懸念材料の一方で、1年目から選手登録して試合に出ることのプラスもあると感じたという。

「彼が試合に出てプレーする必要があるとも感じた。試合に出て、試合の感覚を味わい、試合の激しさを感じることによって、速く成長することにつながると思った」

大変かもしれないけど、練習生より選手登録で。

 何より、八村自身が1年目からユニフォームを着ることを望んでいた。選手登録をしても、当面、出場時間は短いと告げられてもいたが、それでも、試合に出るかもしれないという緊張感を味わいたかったのだという。

「1年間ずっとベンチに座っているよりは、試合に出ないかもしれないですけど、気持ちの準備だけでもできたら……」と八村は言う。最後に公式戦に出た高校3年12月のウィンターカップから、すでに1年近くの月日がたっていた。

「あと1年たって、2年間も試合前の雰囲気とか、その前の心の準備とか、緊張とかも忘れてしまったら、そこからプレーが戻ってくるのは難しいんじゃないかなって思って。大変かもしれないけれど、こっち(選手登録)を選びました」

【次ページ】 今はまだ、勝負どころでは使ってもらえない。

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八村塁

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