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単独無寄港世界一周レース、リタイア。
白石康次郎の思いは次なる挑戦へ。
text by
矢部洋一Yoichi Yabe
photograph byYouichi Yabe
posted2016/12/21 08:00
“サムライコージロー”は、今回のリタイアを糧にし、すでに次の目標に向けて始動している。
ローラン・ジョルダン「一瞬にして終わる」
康次郎は、現地・南アで、その思いのたけを語った。
「ケープタウンに向かう途中、仲間からのいいメールをたくさんもらった。ありがたかった。中でもこのヴァンデ・グローブに過去3回出場し、3位と2度のリタイアを経験している大先輩、フランスのローラン・ジョルダンからの言葉が心に響いた。
“一瞬にして終わる”って書いてあった。
あ、そうだなあと救われた、彼でしか分からないことだから。僕の30年来の夢、何億円という自分では弁償のできないお金をもらって、皆が期待して、それが一瞬にして終わるんです。スパッと。それを2度も経験している彼はすごいなあと思って、勇気をもらいましたね」
なぜ日本に破損した船を持ち帰るのか?
白石はケープタウンで、船を片付けながら、次第にいつもの元気を取り戻し、次への挑戦に向けてのイメージを固めていった。
「悔いを残したくないから、ヴァンデ・グローブ完走はぜひとも果たしたい。だから4年後のレースには再チャレンジを目指す。そのためには、また大変な額の資金が必要になるし、新たな仲間が必要になる。
まずこれからの2年間に何をやって、何を伝え、同時に自分のモチベーションも次のもっと上のステージに上げていかないといけない。幸い、今回のスポンサー、サポーターの方たちは、皆さん好意的で応援を続けてくれている。
だから、せっかく失敗したのだから、船を日本に持って帰ろうと決めた。本当は、完走して持って帰るつもりだったけれど、でもあの船を見せればみんなが喜んでくれる。子供たちを乗せたり、海洋塾をやったりしたい。それをまず2年間続けていれば、自然と次が見えてくると思っています」
「スピリット・オブ・ユーコー」号は、これから船積みされて、来年の春には日本に到着する。
そしてまた白石康次郎の新たな挑戦が始動する。
この男の歩みは止まらない。