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イチロー、早くも2017年に向けて始動。
マーリンズGMが用意するギフトとは?
posted2016/11/17 07:00
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
AFLO
メジャー30球団の編成責任者が一斉に集まるGMミーティングは、ワールドシリーズ終了後に開催される秋の恒例行事だ。今年は11月7日から10日にかけ、アリゾナ州スコッツデールで開かれたが、その場でマーリンズのマイケル・ヒルGM兼編成本部長が丸い目をさらに丸くして話した。
「イチローがもう練習しているんだよ。いつから始めたのかは聞かなかったが、僕が見たのは10月20日過ぎだったかな。長くこの仕事をしているが、こんなに早い時期から練習している選手は見たことがない。最高の選手であることはわかっていたが、やはりイチローはスペシャルだ」
メジャーの編成に携わること20年。ヒル編成本部長の興奮はおさまらなかった。
マーリンズ移籍1年目の昨季は早々に日本へ帰国したため、チーム関係者がオフの始動を目にしたのは今年が初めてだった。このオフ、イチローがとった完全休養はちょうど2週間。10月中旬から本拠地マーリンズパークで動き出し、初動負荷理論の特殊マシーンを使ってのトレーニング、キャッチボール、ケージ打撃などで連日およそ2時間汗を流していた。編成責任者はさらに真顔で続けた。
「長く継続して安定した力を発揮できるひとつの要因を見た。彼は我々の宝だ」
来日した球団幹部にイチロー流のおもてなし。
マーリンズには悲願がある。同本部長は来年1月に日本を訪れることを明かし「3年連続で日本へ行けることは楽しみ」と話したが、この行動の裏側にあるものは2018年を見据えた日本での開幕戦開催だ。
'15年1月に東京で行われたイチローのマーリンズ入団会見では、球団幹部はマイアミから専用ジェットに乗り込み、片道空路18時間、直線で12012キロの移動距離でありながら1泊3日での弾丸ツアーを敢行した。この異例の動きにイチローも「ただただ恐縮しております。この機会を日本で実現できるということは通常ありえないと認識しています」と、頭を下げた。
そして、今年の1月末にも球団幹部は2度目の来日を果たした。イチローはこの誠意に応えるため、銀座の超高級すし店を貸し切り接待。江戸前の本場老舗鮨を堪能したデービッド・サムソン球団社長は「あんなに美味しい鮨をたべたのは生まれて初めて。もうアメリカで鮨は食べられない」と笑わせたが、アメリカ本土最南端の地から足繁く日本へ向かう理由をこう説明した。
「東京で開幕戦をやりたいんだ。'17年はWBCがあるから無理だが'18年にチャンスはあると思う。そのために出来ることはしたい」