球道雑記BACK NUMBER
5球団競合“外れ1位”の佐々木千隼。
1年半前と別人、急成長の原動力は?
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/11/11 11:30
ロッテには涌井、石川という先発の軸がいる。そこに佐々木が加わって三本柱となれば――伊東勤監督率いるチームにとって、この上ない補強となる。
首都リーグ初優勝をもたらした新球・シンカー。
佐々木にその秘訣を訊いた。
「初球の入りは自分の中でも凄く大事にしていることです。甘く行き過ぎてもダメだし、厳しすぎてもその後の球が難しくなってしまうので、相手が狙っている球をフィーリングで感じつつ、そこは各イニングが終わってからベンチでキャッチャーと話し合いながらしています」
こうした言葉の端々にも佐々木のセンスを感じる。今秋のドラフト会議の目玉だった創価大学の田中正義に投げ勝ち、春の全日本大学選手権準優勝の中央学院大学を手玉にとった理由もこのさじ加減が上手いからだろう。
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彼の非凡なフィーリングを感じる出来事がもう一つある。
それは首都大学野球最終戦(対東海大学戦)のことだ。この試合で桜美林大学は東海大学を倒して初優勝を決めたのだが、3対2の1点リードで迎えた9回裏2死、この試合で投げた最後のボールで佐々木はキャッチャー大平のサインに一度首を振っている。
大平が要求したのは直球、しかし佐々木が選択したのはこの1年間の進化を証明するもう一つの決め球であるシンカー。
結果は空振りの三振だった。
「真っ直ぐで決められたら気持ちよいですけど……」
その理由について佐々木はこう話す。
「最後は真っ直ぐで決められたら気持ち良いですし、キャッチャーもそういう想いがあったと思うんです。だけど、今年の秋のシーズンは真っ直ぐが良くなかったので、あのときはシンカーでなら確実に三振が取れると思ったんです」
沸き立つ気持ちを抑えながら三振で終わらせたいという欲は持ちつつ、そのために何が必要かを俯瞰的に見つめベストの答えを選択する。こうしたセンスは誰かに言われて身に付くものではないし、これには津野監督も唸るほどだ。この1年半で全く末恐ろしい投手に成長したものである。