球道雑記BACK NUMBER
5球団競合“外れ1位”の佐々木千隼。
1年半前と別人、急成長の原動力は?
posted2016/11/11 11:30
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph by
NIKKAN SPORTS
2015年5月、土浦市営球場。
この日、行われた首都大学野球で一人のピッチャーに目を奪われた。
打者の手元でホップするストレートは球威、球速ともに申し分ない。そのストレートと同じ軌道で縦に鋭く落ちるスライダーは彼のコンビネーションを活かす最大の武器になっていた。
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こんなピッチングをされたらプロの二軍、いや一軍でも簡単に打たれることはない。そう思わせるほどに桜美林大学・佐々木千隼のこの日のピッチングは光り輝いていた。
そこから約1年半――。
今年10月のドラフト会議で“外れ1位”ながら史上初の5球団競合で1位指名を受けた佐々木がどこまで成長したのか。それを確認するため、10月23日にサーティーフォー相模原球場で行われた首都大学野球最終戦と、10月31日から4日間、横浜スタジアムで行われた関東地区大学野球選手権(横浜市長杯)に通うことにした。
打たせて取りつつも、勝負どころではねじ伏せられる。
ひさしぶりに見た彼は1年半前と比べるといい意味で別人だった。
豊富な球種を巧みに使って、三振を取るというよりも、打たせて取るピッチング。かと思えば勝負どころではギアをもう一段上げて「力」でねじ伏せられる。「大人のピッチング」をするピッチャー。もうすぐ飛び込むプロの世界を前に、彼は一皮も、二皮も剥けていたのだ。
この進化を佐々木本人に振ると、彼はこんな答えを返してきた。
「(土浦のときは)たまたまそのスライダーが切れていたんですけど、あそこまで切れていたのはたしかに今までになかったです。もちろんそれはそれで良かったんですけど、あのときはほとんどスライダーだけに頼っていたので、今はもう一個決め球が出来たし、その辺は成長できたのかなって思います」