話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
湘南にあって、名古屋にない「希望」。
スタイルを創るのは今しかない!
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/11/04 13:10
田中マルクス闘莉王が復帰してから、勝ち点差7を詰めてきた。スタジアムでは「ありがとう」という声が響いていた。
個に依存する名古屋には「スタイル」がない。
実際、試合を見ていると湘南は来季に希望が見える試合になったが名古屋は来季、J1昇格に向けて決定的に足りないものが露呈した。
湘南は曹貴裁監督が5年かけて築いた「湘南スタイル」がある。
名古屋戦も湘南のサッカーは躍動感にあふれた素晴らしいものだった。細かくパスをつなぎ、どんどん前に選手が出てくる。ここぞという時に人数をかけて点を取りにいき、守備に回った時は全員で守るというスタイルが、選手の中に脈々と受け継がれている。曹監督の去就は未定だが、湘南スタイルを軸に選手補強がうまくできれば、2014年のように圧倒的な強さでJ1復帰を果たすことも可能だ。
では名古屋には、何が残っているのだろうか。
シーズン序盤、シモビッチの高さと永井のスピードは名古屋のストロングポイントになった。だが個人に依存した攻撃は、研究されると効果を発揮するのが難しくなる。守備も組織的というよりは個人能力で守っている。もともと個人能力の高い選手を集めて、彼らの感性を生かすサッカーをしてきているので、調子がいい時は手がつけられないが、悪くなると回復するのに時間がかかる。そもそも明確なスタイルがないので、立ち戻るべき原点がないのだ。
チーム全体で点を取るスタイルを持つ湘南と、個の能力に依存する名古屋のサッカー。
どちらにチームとしての伸びしろがあるのか。どちらが強くなるのか。いわずもがなであろう。
ビジョンに共感できれば、残留する選手も増える。
では、名古屋はどう再生すべきなのか。
強いチームにはスタイルがある。浦和しかり、川崎しかり、広島しかりである。
だが、名古屋には、これだというものがなく、個人能力に任せて攻めて、個人で守るサッカーで、ゆえに○○スタイルと名称がつかない。
「型にはめるな」という言葉もあるが、それは成熟したチームだけに与えられる特権だ。クラブとして明確なスタイル(方針)を打ち出す。それを実現すべくトヨタが資本増資で経営に乗り出しているならば、世界の企業らしく昔のベンゲルのようなあっと驚くような指揮官を招聘し、チーム改革を推し進めてほしい。
選手は金銭面を含めた契約条件を重視するが、クラブが目指すべきビジョン、サッカーのスタイルに共感できれば快く残留してくれるはずだ。
かつてJ2に降格したが、その後、クラブを浄化してJ1に昇格し、今や安定した強さを見せる浦和やガンバ、柏のようなチーム創りを名古屋にも望むばかりだ。