サムライブルーの原材料BACK NUMBER
「20億円稼げる選手になってやる」
小林祐希、代表は我が道の先に。
posted2016/11/03 11:30
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
AFLO
オランダからの自己主張が聞こえてくる。
今年8月、ヘーレンフェーンに移籍した小林祐希はトゥエンテ戦(9月10日)でデビューして以降、先発に定着している。10月30日のフェイエノールト戦まで彼が出場した試合はオランダ杯を含め、7勝2分けと負けなしだ。リーグ戦はフェイエノールト、アヤックス、PSVの“ビッグ3”に続く4位と、小林の加入によってチームには勢いが生まれている。
デビューして2カ月弱ではあるが、ヴァイッド・ハリルホジッチが求める「デュエル」(決闘)では随分とたくましくなった印象がある。
首位を走るフェイエノールトとのアウェーマッチでは4-3-3の左インサイドハーフで先発。前半5分、左サイドバック、左ウイングと三角形をつくってサイドバックのバイケルからパスを受けると、ディフェンスに来た相手に対してうまく右手で押さえながらボールをキープしてウイングのサム・ラーションにパス。ここから先制点が生まれている。
ゴールやアシストではなく“黒子の役割”を果たす。
光ったのは守備での1対1の対応力。ペナルティーエリア手前に素早く戻って相手を食い止め、先に体を入れてファウルを取ることも巧い。終盤にも相手FWの侵入を防ぐなど、落ち着いて対処している。カイトにボールを奪われてピンチを招いたシーンなどもあったにせよ、チームプレーに徹して“黒子の役割”を果たしている。
小林の献身的な働きが、好調のチームを支えていると言っていい。“日本代表でもやれる”という彼の意思表示が、プレーからはビンビン伝わってくる。
「周りを活かせ。そうすれば最後、自分のところにボールが転がってくるようになる」
尊敬する名波浩監督のもとジュビロ磐田で学んできたことを、オランダでも実践しているように感じる。無理に攻撃に出ていくことはなく、周りとの連係を重視する。
現時点でゴール、アシストはない。しかし目に見える数字を追い求めているわけではない。チームの中心になっていくにつれて自然とボールが自分に集まってきて、結果的にゴール、アシストが生まれてくるという発想なのだろう。